転売ヤーがメルカリで
コメを転売する時の「手取り」は?
そして第二に、転売ヤー視点で見た場合にコメが「美味しい商材」であるかどうかは疑問が残る点だ。メルカリでは備蓄米の出品が禁止となったものの、コメそのものの転売は禁止されていない。
仮に転売ヤーが5キログラム2000円の備蓄米を購入し、袋を詰め替えて5キログラム4000円で転売したとする。この場合、見た目上は購入額の倍で売れるように見えるが、メルカリでは出品者が送料を負担するのが一般的になっている。
宅配便で5キログラムのコメを発送した場合、送料は全国一律で100サイズの1050円(5キログラム以内の送料は850円だが、梱包や外箱などで5キログラムを必ずオーバーする)。これにメルカリの手数料(販売価格の10%)を合わせると、かかる経費は1450円となり、仮に5キログラム4000円で売れても手取りは550円にとどまる。
5000円でコメが売れた場合は手取りが1450円になるが、備蓄米の放出によって相場がある程度下がると考えられる。スーパーマーケットよりも高い価格で個人間取引のコメを買う人はあまり多くない。強気な価格設定では在庫を腐らせてしまうことにもなりかねないし、コメはそれなりに容積があるのでスペースも圧迫する。
「長期で持っていても安心」という商材ではなく、売りが売りを呼んで値崩れを起こす可能性が高い商品だと考える。そのため、転売ヤー視点で見るとコメはあまり美味しい商材とはいえず、ほかの利益率の高い商品を狙ったほうが建設的だといえるのではないか。
ホットケーキミックスが
「高額転売の餌食に」の嘘
ちなみに、メルカリの表面価格だけを抜き出して「高額転売」と報じる例はコロナ禍でも多く見られた。コロナ禍ではマスクや消毒液のような感染予防にかかわる物品以外にも、ゲームやミシン、ホットケーキミックスなど、巣ごもりを楽しむための商品が人気を集めたことは記憶に新しい。
私が忘れられないのは、「ホットケーキミックスが高額転売の餌食に」という論調で報じられたニュースである。当時市場価格が100円前後だった雪印のホットケーキミックス(150g)2袋が500円で落札されていることを挙げ「2.5倍の価格で高額転売されている」と報じられていたが、これも送料と手数料を考慮すると、単なるボランティアと変わらないことがわかる。
100円のホットケーキミックス2袋を500円で売った場合、手数料を引いて出品者に入るのは450円。しかしホットケーキミックス2袋は300グラムあるため、定形郵便などの送料が安い発送手段は使えない。おそらくもっとも安く上がるのはヤマト運輸「ネコポス」の195円。この送料を引くと手取りは255円となり、もうけはたったの55円。
これで暴利を得ているようなニュアンスの報道をするのはどう考えても無理があると言わざるを得ないのだが、SNSでは「こんなものまで転売のターゲットにするなんて許せない」というコメントが多く見られた。
この2点を鑑みると、そもそもフリマアプリやオークションサイトで利益を得ている転売ヤーはほとんどおらず、5キログラム2000円の備蓄米が放出されたあとも、大きく稼ぐことは難しいと言わざるを得ない。