コメ卸大手では
仕入れが減って売り渡し価格が上昇
トラブルの際に感情が先行してしまうのはよくあることではあるが、ファクトを検証せずに先入観だけで誤った行為を拡散してしまうのはデマを拡散する迷惑行為としかいえない。
事実とはかけ離れた言説が世間を支配すると、喜ぶのは本当に暴利を貪っている人間だろう。私はフリマアプリやオークションサイトを使って個人間レベルで利益を得ることは難しいと思っているが、もっと上位のレイヤーにいる層がもうけを得ていることまでは否定していない。
たとえば、コメ卸大手のヤマタネが5月13日に開示した2024年度(2024年4月~2025年3月)のコメを含む食品事業の売上高では、前年度比1.5倍の495億8600万円、営業利益が前年度比3.7倍の23億5100万円であることを明らかにした。しかし販売数量は前年度比で23%減の7万1000トンにとどまっている。
つまり、仕入れが減ったにもかかわらず売り渡し価格が上昇したことで、大幅に利益を伸ばした形になる。しかし、こうした卸業者が「不当に利益を得ている」と批判されることは少ない。それは自由な経済活動の範疇だからだと捉えられているのか、それとも単に「知らないから」なのかは私には判断できない。
また、フリマアプリやオークションサイト以外の販路を持つような「上級の転売ヤー」ともいえる人間が転売で利益を得ている可能性も否定はできない。出所不明の安いコメを大量に仕入れ、飲食店などには相場で販売することで利益を得られる可能性は否定できないが、存在するかを含めて検証することは困難を極めるだろう。
1つの要因だけでコメの価格が
大幅に上昇することは考えづらい
しかしながら、コメのように巨大な規模を持つ商品に関しては、少なくとも1つの要因だけで価格が大幅に上昇することは考えづらく、実際には複数の要素が絡み合っている。
仮に私が「自民党さえ消滅すれば、物価も税金も下がって日本は暮らしやすい楽園になる」とか、「子どものスマホを全面禁止すれば、いじめはすべてなくなる」と大声で主張すれば、有識者からは笑いものにされるだろう。これは言うまでもなく、物事の複雑な因果関係を無視して1要素だけに原因を転嫁しているからだ。
しかしながら、転売ヤーに関する言説だけはファクトを無視して無条件に支持される傾向があり、気持ち悪さを覚えることがよくある。
少なくとも、コメを取り巻く状況に関しては、冷静になって状況を見定める必要があるといえるだろう。