東京都内のスーパーマーケットで、米売り場を視察する小泉進次郎農水相東京都内のスーパーマーケットで、米売り場を視察する小泉進次郎農水相=5月23日午後、東京都江東区(代表撮影)

小泉農水大臣が、「備蓄米を5キロ2000円台で店頭に並べたい」と発言。コメの値下がりに向けて500人規模の専門チームを発足させた。“コメ担当大臣”の活発な動きは注目される一方、“ズレている”との批判も。専門家は、「今年の新米の価格は下がらない」と分析する。日本人の食を守る立場である農水相には、苦し紛れの選挙対策ではなく、長い目で見たわが国の農業のあり方を真剣に考えてほしい。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

小泉大臣の就任で「令和のコメ騒動」は収束するか

 わが国のコメの価格の高騰に歯止めがかからない。4月の消費者物価指数の中では、うるち米(コシヒカリを除く)は前年同月比で98.6%も上昇した。それに伴い、調理食品ではおにぎり、外食分野ではすしの値上がりが鮮明だ。

 今回の「令和のコメ騒動」は、かつて、1973年の第1次石油ショック時、狂乱物価発生で起きた“トイレットペーパー争奪戦”を思い起こさせるものがある。

 コメの価格が高騰している原因は一つではない。基本的に日本のコメの生産量が伸びていないことに加えて、異常気象による減産への懸念や、堅調な需要により需給がタイトになったことがある。また、これまで農林水産省はコメの価格を下げないよう政策運営してきたため、価格高騰の対応が遅れたことは見逃せない。

 農林水産相に就任した小泉進次郎氏は、備蓄米の入札方式を「競争入札」から「随意契約」に切り替える方針だ。随意契約によって、政府が指定した業者に、指定した価格で備蓄米を供給することができる。それは、コメの価格形成に政府自身が関与することを意味する。政府の関与で、コメ価格を下げさせようとする苦肉の策である。

 ただ、小泉大臣とマーケットの戦いがそう簡単に決着するかは、疑問符が付きそうだ。業者の間で、「コメ価格は安定する」との見通しが定着しないと、業者は在庫を迅速に放出しないだろう。

 また、非効率な流通システムのせいで、政府の値下げ策の効果が出るには時間がかかるかもしれない。持久戦の展開になる可能性もあり、コメ価格を巡る情勢は、今夏の参院選の重要な論点にもなり得るだろう。