
マルコ・シェール氏は6年前、ドイツのバルト海沿いの村テプリッツで築200年の屋敷を購入した。数年にわたる改修工事を経て、石とレンガでできた廃虚は洗練された企業本社に生まれ変わり、同氏のオーガニックアウトドア衣料品会社ノルトヴォレが入居した。
問題は、シェール氏と従業員40人がそこにいることは違法であることだった。地元当局は当初、黒い金属屋根は人間の従業員ではなく馬の収容に適したものだと判断した。さらに、非常口として仮設された金属製の階段が花こう岩のスラブの上に設置されていることが判明した。花こう岩は「自然建材」として特別な建築許可が必要になる。排煙窓は基準に適合しておらず、建築許可はまだ下りていない。
「ここに座っているだけで法律違反になる」とシェール氏は話す。当局との交渉は数年に及び、罰金は2万5000ユーロ(約410万円)に上った。現在もなお、「当局が来て立ち退きを命じる恐れがある」という。
ドイツ経済は過去5年間、成長が頭打ちとなっている。新政権は今後10年間で防衛とインフラ整備に1兆ユーロを投じることで状況を変えようとしている。ただエコノミストらは、経済成長を阻害し投資の妨げとなっている規制の撤廃という、コストのかからない重要な取り組みを進めなければ景気刺激策は無駄になりかねないと警告している。
経済政策について政府に助言する5人のエコノミストの1人、ベロニカ・グリム氏は「過剰で邪魔な規則のどれを廃止し、どれを修正すべきかを早急に決める必要がある」と述べた。エコノミストらは5月の年次報告書で、官僚主義が成長に対する大きな障害であると指摘した。同氏は提言内容について、「非常に労力のかかる作業であり、政府ではまだ認識が十分ではないようだ」と話した。