死化粧を施す納棺師写真はイメージです Photo:PIXTA

浜辺美波と目黒蓮のダブル主演映画『ほどなく、お別れです』が話題を集めるなか、現実の納棺師は、どんな「最後の別れ」に立ち会っているのか。亡くなった人に施される「死化粧」は、単に顔を整えるためのものではない。納棺師の著者によれば、遺族がふと口にする「パパっぽい」「いつもの顔だね」という言葉の中に、故人が“その人らしく”戻ってくる瞬間があるという。死者と生者の距離をそっと縮める、“最後の身支度”に込められた思いとは。※本稿は、納棺師の大森あきこ『いつもの場所に今もあなたがいるようで』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

故人はどんな化粧で
旅立ちたいのか

 亡くなった方にお化粧するのは、遺族の中にある故人のお顔のイメージに近づけるためです。遺族にはいろいろな要望がありますが、具体的にどんなお化粧にしますか?と言われて即答できる人は少ないものです。

 年を重ねてだんだんお化粧もしなくなるかもしれませんが、遺影をみるときっとこだわりがあっただろう方の遺族が、最近はお化粧してなかったからしなくてもいいですと話すのを聞くと、亡くなった方ご本人の希望はどうだろうという想いが心の隅っこに湧きあがります。

 最近、模擬納棺式や生前葬などのイベントで生きている方を納棺することが多くなりました。そのような死について考える機会があると、同時に自分が一体どんなお別れの時間を持つのか考えるようになるのかもしれません。棺の中に入った自分の顔を思いうかべ、最後のお化粧の希望を残したい!とおっしゃる方が結構いらっしゃいます。

 女優さんなど著名な方が亡くなると、お付きのメイクさんに最後のメイクをしていただくこともあります。美容業界で働いている方も、もしかすると最後はきれいにメイクしてもらうツテがあるかもしれません。しかし、私のような一般人には専属のメイクさんもツテもありません。