【マンガ】「見てるだけでムカつく」一流企業に見下された“オバハン職人”の反撃が痛快すぎてスカッとする!『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク

三田紀房の起業マンガ『マネーの拳』を題材に、ダイヤモンド・オンライン編集委員の岩本有平が起業や経営について解説する連載「マネーの拳で学ぶ起業経営リアル塾」。第14回では、若者から人気を集める急成長の中国発アパレルECについて解説する。

2人の女性が互いに「怒り爆発」

 格闘技イベント「豪腕」のグッズ販売参入に向け、一ツ橋物産の井川泰子らとの打ち合わせに向かった主人公・花岡拳。結局、取引には応じてもらえなかった花岡たちだったが、今度はTシャツ工場の技術責任者であるヤエコ(片岩八重子)を連れて、グッズの内覧会に向かう。

 心中でヤエコを「なにこのオバハン」と見下す井川と、そんな井川の思いを察して「キャリアウーマンぶっちゃって」と静かに怒るヤエコ。花岡は「狙いどおり」とほくそ笑むが、ヤエコと井川の2人が険悪なムードを醸し出す。

 花岡は、豪腕のグッズのセンスがいいのは一ツ橋物産の企画力のたまものだと井川を褒める。しかし、その横でヤエコがTシャツを手に取り、「やっぱ中国製ね、ウチのほうが断然モノがいいわ」と品質を批判する。

 それに井川が「国産のほうがクオリティが高いことはわかっています」「しかし(中国製で)価格との調整がありますので…」と反論すると、再びヤエコが「国産は高いって思い込みだけで現場を見ようともしない」と返し、2人の議論はますますヒートアップしていく。

 まさに一触即発の状態の2人。だが花岡は、その様子を見てニヤけ顔になり、心の中でこうつぶやくのだった。

「いいぞ!願ってたとおりの展開…互い、怒り爆発」

 日本のTシャツ縫製工場で「職人」としてのキャリアを築いてきたヤエコからすれば、井川が取り扱う中国製のTシャツは「安かろう、悪かろう」にしか見えないだろう。だが、現代の日本において「国産」アパレルはほとんどないに等しい。

 経産省の発表によると、アパレル製品における輸入浸透率は、2022年の時点で98.5%(数量ベース)。つまり、国産のアパレル製品はわずか1.5%しかないとも言えるわけで、「日本で流通するアパレルのほとんどが海外製である」という現実をあらためて突きつけられる。

若者人気で急成長、中国アパレルが抱える課題

漫画マネーの拳 2巻P119『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク

 ちなみに中国発のアパレルで言えば、日本でも若者を中心に人気を集める「SHEIN(シーイン)」に触れないワケにはいかないだろう。

 SHEINは2008年に中国・南京で創業した。同社の最大の強みはユーザーの検索データやSNSのトレンドを分析し、最短数日でアパレルのデザインから販売までを実現していることだ。

 加えて、製造拠点を中国に集約することでオペレーションを効率化。また商品の低価格化を徹底した。さらに米国などでは、低価格商品の関税免除制度なども活用してグローバル進出するなど、さまざまな施策で地盤固めをしてきた。

 同社は未上場企業で業績を公開していないが、2023年時点で売上高300億ドル超とも推定されている。すでにZARAやH&Mといったファストファッション大手に肉薄する規模になっている。

 もちろんSHEINにも、急成長企業にありがちな課題が山積している。米国での上場計画も規制当局の審査などで断念することになったほか、商品からの基準値を超える有害物質の検出、他ブランドの模倣による知的財産権の侵害など、多くのトラブルも報じられている。

 ともかく、SHEINはデジタル、グローバル時代の新たなビジネスの象徴とも言える企業として注目を集めている。だが同時にサステナビリティや倫理観など、新たな課題を浮き彫りにしているとも言える。

 ヤエコとの対立を激化させる井川。だが次回では、そんな井川から思いもしない提案があり、花岡たちのビジネスは一歩前進することになる。

漫画マネーの拳 2巻P120『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
漫画マネーの拳 2巻P121『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク