つまり、立ち止まらず、「決めること」が大切なのです。人間は決めさえしてしまえば楽しもうとする、都合の良い生き物なのです。

 豪ニューサウスウェールズ大学のザボ(編集部注/マリアンナ・サボ。心理学者)とラヴィボンド(編集部注/ピーター・F・ラヴィボンド。心理学者)が行った39人の大学生に対する調査では、「悩み事の48%は問題解決のプロセスに関するものだった」ことが分かりました。

 つまり、結果に対して悩んでいるのではなく、どうやってその悩みを解決するかで悩んでいるということが示唆されたのです。そして、結果は変えようがないと悲観的に考える人ほど、さまざまな解決法を否定的にとらえる傾向もあったといいます。

 どんな方法を思いついても、「きっとダメだ」と考えてしまい決断できない。“悩むことに悩む”という悪循環を止めるには、一定のルールにしたがって機械的に決めるなどで「やる」「やらない」を決める、あるいは決めてもらうしかないんですね。

 私自身も、修士課程だけ終えて中高の教員になるつもりだったのに、自分の意図しない形で大学院の博士課程で勉強することになってしまった際、「もう博士を取ることになったのだから、とりあえず大学の教員になるべく、準備をしよう」と気持ちを切り替えて、大学の教員になるのに必要な要件を満たすために論文の執筆に励んだり、非常勤として教歴を積んだりということを始めました。

 一度ゴール、進む方向性が決まれば、あとは舵を切った方向に人間はがむしゃらになれるのです。その効果は、コイン投げの実験が示している通りです。