まずレヴィットは、自分が判断しかねている事を書き込み、その後、画面上で「コイン投げ」ができるウェブサイトを開設しました。表が出たら「実行する」、裏が出たら「実行しない」というメッセージが出る、とてもシンプルなサイトです。
そして、そのサイト上で1年かけて4000人の悩みを収集し、コインを投げてもらいました。書き込まれた悩みとしてもっとも多かったのは、「今の仕事を辞めるべきかどうか」。他にも、「離婚すべきかどうか」といった、人生にかかわる重要な悩みが数多く寄せられたといいます。その後、「コイン投げによって人生がどう変化したか」を追跡調査しました。
その結果、ユーザーの63%がコイン投げのメッセージに従っていたことが判明しました。驚くべきは、コインによる判断が表であろうが裏であろうが、つまり、「実行する」であろうが「実行しない」であろうが、悩みの解決に向かって何かしら行動をした人のほうが、半年後の幸福度が高かった点です。つまりコイントスの結果、会社を辞めた人も、辞めなかった人も幸福度は高くなったのです。
この調査から分かることは、人は「選択することに迷うから動けない」のであって、「選択した後のことを考えて動けない」わけではないということです。
選択してしまえば、あとはよりよい未来を実現するために動くしかありません。わざわざ不幸になる方向に努力する人なんていないですよね。
悩むことに悩む
果てしない悪循環
人間は、行動と気持ちが矛盾する「認知的不協和」が生じると、なんとか一貫性を保とうとします。自分で決断することに迷いが生じるのは、納得いかない選択をしてしまうことが怖いからです。だったら、ときには判断をコインの表裏に委ね、「コインが決めたことだから」と割り切ってしまったほうが、よほど気持ちが軽くなるというわけです。
ここで大事なことは、一度どうするか決めてしまえば、人はできるだけ後悔しないように行動していくため、幸福度が向上しやすくなるということです。