
外国人投資家が現時点で米国債を警戒する理由はすでにいくつもあるが、もう一つ理由がある。自国債券を購入した方が往々にしてリターンが大きいのだ。
ドル安リスクとそれに対するヘッジコストで、米国資産の投資妙味が相対的に低下している。これは財政見通しの悪化と貿易戦争に直面している米国債市場にとってタイミングが悪い。
外国人投資家はおそらく、米国のデフォルト(債務不履行)やそれに近い事態は危惧していない。ただ、米長期金利が他国より高いことによる米国債投資の妙味はなくなった。
原因は為替変動リスクをヘッジするコストの上昇だ。
コストが上昇しているのは、米短期金利が他国より高い水準が続き、米連邦準備制度理事会(FRB)が近く利下げする見込みが薄いためだ。
最近の債券価格の大幅下落に外国人投資家がどの程度寄与したかは不明だ。公式データによると、外国勢の米国債保有は3月も増加した。同様の国債売りはドイツや英国、日本でも起きている。
ただ、市場がトランプ関税や共和党の税制・歳出法案にマイナスの反応を示した時は、しばしばドルも下落している。資本逃避が起きているのかもしれない。外国勢は米国債発行残高の約4分の1を保有し、米企業に多額の貸し出しも行っている。
米国の成長を支える大口投資家は資金を引き揚げるのだろうか。おそらくそれはないが、最近のドル安による為替リスクは高いコストを伴うため、その代償を求めてくる可能性が高い。