『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』は、東大・京大・早慶・旧帝大・GMARCHへ推薦入試で進学した学生の志望理由書1万件以上を分析し、合格者に共通する“子どもを伸ばす10の力”を明らかにした一冊です。「偏差値や受験難易度だけで語られがちだった子育てに新しい視点を取り入れてほしい」こう語る著者は、推薦入試専門塾リザプロ代表の孫辰洋氏で、推薦入試に特化した教育メディア「未来図」の運営も行っています。今回は、大学の学部をほとんど知らない高校生たちについて解説します。
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学部をほとんど知らない高校生
「早慶に行きたいけど学部はなんでもいい」こう考える高校生もいますよね。
推薦入試の相談をしていると、毎年のように同じ光景を目にします。成績も悪くない。英語資格も持っている。課外活動の実績もある。それなのに、書類選考や二次試験であっさり落ちてしまう受験生です。
その多くに共通しているのが、「学部をほとんど知らない」という致命的な弱点です。
本人は一生懸命書いているつもりでも、大学側から見ると、「この学部で学ぶ姿がまったく見えない」そう判断されてしまっています。
志望理由書を読んでいて、すぐに分かるパターンがあります。「貴学は国際性に優れ~」「少人数教育で主体的に学べる点に魅力を感じ~」「多様な価値観に触れながら社会課題を学びたい~」
一見、それっぽく聞こえます。しかし、これは大学パンフレットの要約にすぎません。問題は、「その学部で、何を・誰から・どう学ぶのか」が、まったく書かれていないことです。
推薦入試は、「大学に入りたい理由」を見る試験ではありません。「この学部で、4年間学び続ける必然性があるか」を見ています。
ICUで落ちて、上智で受かった理由
象徴的な事例を一つ紹介します。以前自分が関わった人で、国際基督教大学(ICU)を第一志望として出願した人がいました。その人は英語力も高く、国際経験もあり、表面的な条件は十分でした。
しかし、結果は不合格。「実績は素晴らしかったのに何故だろう?」と思って志望理由書を見たところ、理由ははっきりしていました。志望理由が「リベラルアーツ教育が魅力」「国際的に活躍したい」といった、ICUでなくても成立する話に終始していたのです。
一方で、その後出願した上智大学では合格しました。偏差値的には同じくらいの大学になるわけですが、一体何が違ったのでしょうか?
それは、上智大学向けの志望理由書の中身です。上智のどの学部で、どの教授の、どの授業を通じてそれを学ぶのかを具体化していたのです。
1年次に履修したい基礎科目、2~3年次に深めたい分野、卒業後にどう社会と接続したいのか。ここまで年次計画レベルで言語化しました。これが功を奏したのか、上智大学に合格となりました。大学側から見れば、「この学生は、入学後の姿がはっきり想像できる」そう判断できたからだと考えられます。
推薦入試は「学部別採用」だという事実
ここで、親御さんにもぜひ知っておいてほしいことがあります。推薦入試は、大学全体で採っている試験ではありません。ほとんどの場合、学部が、学部に必要な人材を選んでいます。
だからこそ、学部の中にどんな分野があるのか、どんな教授が、どんな研究をしているのか、どんな授業が、どんな順番で用意されているのか。これを知らずに書かれた志望理由書は、一瞬で見抜かれます。
「調べていないな」「本気でここで学ぶ気はなさそうだな」と思われた時点で、勝負は終わりです。やらなければならないことは、極めて地道です。
学部の公式サイトを隅まで読んだり、教授紹介ページを見たり、シラバスを実際に開いてみたり、授業名からキーワードを拾ったり、関連書籍や論文に少し触れてみたりするだけで、志望理由書の質は劇的に変わります。逆に言えば、ここをやっていない受験生が、まだ圧倒的に多いというのが現実です。
親御さんにお願いしたいのは、合否を予想することでも、出願校を決めることでもありません。次の質問を、ぜひ一度してみてください。
「その学部で、どんな授業を受けたいの?」
「気になっている先生はいる?」
これに、子どもが答えられなかったとしたら、それは能力不足ではありません。準備不足です。そして、その不足は、今からでも十分に埋められます。
推薦入試で落ちる理由の多くは、「才能がないから」ではありません。学部を知らないまま、出願しているからです。逆に言えば、学部を理解し、「なぜここで学ぶのか」を具体的に語れるようになった瞬間、合格の現実味は一気に増します。
志望理由書は、学部との相性を示す指標です。まずは、大学名ではなく、学部の中身を見てみてください。
(この記事は『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』を元に作成したオリジナル記事です)




