「ねえ、あたし太った?」

 テレビを見ながら朝食を食べていた中田堅二氏に妻が話しかけた。

 「ええ?ああ、どうかなあ」

 「ミキがね、『おかあたん、あごが二重だね』だって。もうショック~」

 「ふうん。口が達者になったもんだなあ」

 「ねえ、どう思う?」

 「別に変わってないんじゃないの」

 「……ちょっと!いい加減なこと言わないでよ」

 妻がいきなりリモコンをつかみ、テレビのスイッチを切ったので中田氏は度肝を抜かれた。

 「ななな、なんだよ、いきなり」

 「だいたいあなたってちっとも人の顔を見てないじゃない。だから太ろうがやせようが気にならないのよ! 新しい口紅つけたってノーコメントだし。いったいあたしはあなたの何なの?家政婦?下宿屋のおかみさん?いい加減にしてよ!」

 中田氏はひたすら面喰っていた。妻の顔を凝視しないからといって、なぜここまで激怒されるのか。だいたい口紅の色の違いなんてわからないし、毎日一緒にいるから、いつのまにか二重あごになっていたって気づきようがない。

 『女房の顔なんていちいち注意して観察してないよ……体型がトドに似ているなあ、とは思ってたけど』

部下の名前が
覚えられない男たち

 人材派遣会社に勤める30代の女性は、こう証言する。

 「直属の上司は40代半ばですが、部下の顔と名前が全然一致しないらしいんです。もの覚えが悪いのか知りませんが、指示するときも『そこのあなたさあ』『ちょっと彼女ォ』といった具合。言われた方は『この人にとっては、自分なんてとるに足らない人間なんだな』と思っちゃいますよね。ちなみに部下は10人。覚えられないほど多くはないですよねえ?」

 人の顔が認識できない、あるいは興味がない――これは男性に特有の傾向らしい。