この新しい手段に対抗するために、銀行は大企業向けの金利を下げて対抗する必要が生じました。貸出金利を下げれば当然、取引から得られる利益も減ります。メガバンクでは実際にそういった現象が起きます。

 結果として行内で一番の花形と呼ばれた本店営業第一部のような大企業を取引先とする部署よりも、営業第四部や第五部のようにそれに準じる企業を取引先とする部署のほうが稼ぎがよくなるという現象が起きたのです。

 貸出金利で稼ぐとした場合には、そういった交渉力がある大企業よりも、高い金利でも仕方なく借りてくれる小規模な企業の方が儲かります。そして個人と比較すれば小規模な企業には常に借入ニーズが存在しますし、金利も住宅ローンよりも高くとれますから、貸出で利益を上げようとしたら小規模企業が一番おいしいように見えるのです。

 ただ小さい企業には倒産リスクがあります。ですから、小さい企業は信用金庫のように地元にあって、こまめに訪問してビジネスが順調に行っているかどうかがわかる金融機関が対応するというように、企業の規模によって対応する銀行がすみ分けられる状況が長く続いていました。

 そこでイノベーションの話です。理論上は信用金庫の行員が行っているような小規模な企業のビジネスの状態の把握を、スマホがとって代わることは可能です。

 街の小規模な飲食店をイメージしてみてください。繁盛しているお店もあれば苦戦するお店もあります。つい半年前までうまくいっていたお店が急に傾いたり、その逆だったりという現象も頻繁におきます。

 信用金庫なら「最近、調子が悪そうだな」と気づくようなお店の変化も、メガバンクだと気づくことができません。気づいたころには店先に閉店のお知らせが貼ってあるかもしれません。逆に言えば不動産などの担保がない小規模企業にはメガバンクは怖くて資金を貸すことができません。

 ではスマホだったらどうでしょう?最近キャッシュレス化が進んでいます。うまく情報をとればお店が繁盛しているか苦戦しているかはキャッシュレスの支払い状況から把握できるかもしれませんよね。最近では中小ビジネスのDX化も進んでいますから、仕入れデータから同様にお店の繁盛度合いがわかるかもしれません。