「いい人になるのはやめなさい」と言われても部下に強く言えない。だが上司からはノルマがふってくる。なのに部下は動いてくれない…そんな悩める管理職にお薦めなのが、「読むと人生が変わる」「世界中で爆発的に広がっているストイシズムが身につく」と話題の世界的ベストセラー『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』(スコット・ギャロウェイ著)だ。本書を絶賛する「絶対達成コンサルタント」横山信弘氏の特別寄稿第3弾をお届けする。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)

進捗管理に悩んでいるマネジャーへ
「今までわからなかった! まともに進捗管理もできないのか……」
ある証券会社の課長が、経営陣から、このように苦言を呈された。
それどころか「このままだとAIに置換されるぞ」と嫌味まで言われてしまったのである。
理由は単純だ。属人的な資料を大量につくらせ、長時間の会議を延々と続けていたからである。
ここ数年、目標を下げても未達成が続いており、部下たちは疲弊している。
進捗管理の本質を理解せず、ただ報告させるだけの会議。そんなマネジャーは、もはや必要ない。
そこで今回は、AIに置換されないための「正しい進捗管理」について解説する。
進捗管理に悩んでいるマネジャーは、ぜひ最後まで読んでいただきたい。
現状確認なき進捗管理は「おままごと」!
私は、企業の現場に入って目標を「絶対達成」させるコンサルタントである。
意外に思われるかもしれないが、進捗管理で最も重要なのは「現状確認」である。多くのマネジャーはこれを理解していない。
「今月の売上はどう?」
「順調です」
「そうか、がんばって」
こんなやり取りを続けても、正しく現状を把握することはできない。
厳しい言い方になってしまうが、これでは「おままごと」だ。
「進捗管理」について読むべき本がある。
ニューヨーク大学で20年以上教鞭を執るスコット・ギャロウェイ教授のベストセラー『一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』だ。
本書には、
「測定できるものは管理できる」
とある。書籍から引用してみよう。
「測定できるものは管理できる」ということは、逆に言えば、「測定できないものは管理できない」ということだ。
先述の課長は、この基本を完全に無視していた。
部下につくらせる資料は、主観的な現状報告ばかり。「がんばっています」「厳しい状況です」といった曖昧な表現が並ぶ。
数値化されていない報告書を何時間も読み合わせるだけでは、現状を正しく確認できない。
現状を確認するには、次の3つの視点が必要だ。
(1)量で確認する
(2)プロセスで確認する
(3)レベルで確認する
売上なら具体的な金額、プロジェクトならどの工程まで進んでいるか、スキルならどのレベルに到達しているか。これらを明確にしなければ、改善策など立てようがない。
ダイエットでたとえてみよう。
「8月31日までに体重を45キロにすることが目標。6月1日現在で51キロ」
これが正しい現状把握だ。
このように現状を認識できれば、あと約2か月間で6キロ痩せる必要がある、とわかる。
「ダイエットは順調です」「若干、遅れ気味です」といった表現では何もわからない。現状は「測定」できて初めて管理ができることを覚えよう。
職場にいる残念すぎるマネジャーの特徴
また、驚くことに、多くのマネジャーは「進捗」と「現状」の違いすら理解していない。
進捗は「目標に対してどの程度進んでいるか」という主観的な判断だ。
一方、現状は「今この瞬間の状態」という客観的な事実を指す。
「現状どう?」と聞かれて「順調に進んでいます」と答える部下がいたら、正しくフィードバックしよう。
「それは進捗を答えているのであって、現状を答えていない」
と。知りたいのは部下の主観ではない。客観的な事実なのだ。
したがって正しくは、
「売上3億円です」「在庫は100個です」
と事実で伝えることだ。
先述した課長は、この違いも理解していなかった。
部下に「現状を報告しろ」と言いながら、実際は「うまくいっているかどうか」という進捗ばかりに耳を傾けていた。結果、具体的な数字が見えないまま、ただ時間だけが過ぎていったのだ。
その指標は「コントロール」できる?
また、目標達成に貢献しない「現状」を確認しても、あまり意味がないことも知っておこう。
「先月から3円も円安が進んでいます」
「原材料価格が10%高騰しています」
進捗管理で確認すべき現状は、みずからコントロールできる指標にすべきである。
ここで再び『一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』から引用してみたい。
「市場環境が厳しい」「競合が強い」。こういった類も現状ではある。しかし、コントロールできない。このような”前提”を踏まえたうえで、自分たちがコントロールできる数値に焦点を合わせるべきだ。そうでないと進捗管理は機能しない。
AIに代替されないために必要なこと
では、どうすれば正しい進捗管理ができるのか。
答えは「合理的に執着する」ことだ。この表現も『一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』で登場する。
合理的に執着するためには、データに基づいて判断する。感情に振り回されず、次の3ステップを愚直に繰り返すことだ。
(1)現状を確認する
(2)ギャップを確認する
(3)改善策を考える
マッキンゼーの「空・雨・傘」フレームワークをご存じだろうか。
まず空を見る(現状確認)。次に雨が降りそうか判断する(進捗確認)。そして必要なら傘を用意する(改善策立案)。シンプルだが、これが進捗管理の正しい手順だ。
たとえば、営業目標が年間1億円で現状7000万円なら、ギャップは3000万円。このギャップを埋めるために、訪問件数を増やすのか、提案内容を改善するのか、顧客戦略を見直すのか。具体的な改善策を考える。
まとめ
このように、もしマネジャーが属人的で非効率な進捗管理を続けるなら、間違いなくAIに置換されるだろう。AIは正しく進捗管理するために、みずから測定できる指標を思いつくだろう。そして感情に流されず、データを正確に分析し、最適な判断を下す。AIこそ、目標を達成するまで合理的に執着しようとするのだ。
だから、部下にただ報告だけさせ、
「当たり前のことを、当たり前にやるように」
「最後まであきらめず、気を引き締めてやっていこう」
なんて心掛けだけを伝えるのは、もうやめよう。それだけで目標が達成できるほど、甘い時代ではなくなった。
現状を数値で把握し、ギャップを認識し、改善策を決める。この3ステップを愚直に進めていくのだ。
(本書は『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』に関する書き下ろし特別投稿です)
企業の現場に入り、営業目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の考案者として知られる。15年間で3000回以上のセミナーや書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。現在YouTubeチャンネル「予材管理大学」が人気を博し、経営者、営業マネジャーが視聴する。『絶対達成する部下の育て方』など「絶対達成」シリーズの著者であり、多くはアジアを中心に翻訳版が発売されている。