【医者が教える】60年超のデータでわかった…病気になりにくい人の「理想の朝ご飯」その本当の正体

「一生、病気に悩まずに生きた人の共通点は？」
1963年に始まった「CIRCS研究」は、日本人の健康の「普遍的な法則」を見出すために1万人を60年間追跡調査した日本の財産的研究だ。
医療×統計の技術を駆使して「生涯、健康的に長生きする人の習慣」を定点観測で研究し続けた本研究は、日本人の健康を地域比較で徹底調査した世界最長の統計研究であり、絶大な信頼性を誇っている。
圧倒的エビデンス力を誇る本研究が突き止めたのは、実は健康な人ほど、「健康になる習慣」を無意識のうちに実践しているという衝撃の事実だ。
では、その習慣の正体は何か？ 話題の新刊『10000人を60年間追跡調査してわかった健康な人の小さな習慣』に掲載されている数ある法則の中から、今回は「健康に生きる人の特徴」について紹介したい。（構成・執筆＝中村富美枝）

60年超のデータだからこそ見える「真実」

　私は疫学者兼医者ですが、「疫学（えきがく）」という単語に馴染みがない方も多いと思いますので、まずは「疫学」について説明しましょう。

「医療」と「統計」を掛け合わせた実践的学問、それが疫学です。「病気が起こる原因や、どうやったら予防できるのかということを、人の集団を対象として調べることにより明らかにする学問」と定義できます。

　私は現在、母校である福島県立医科大学医学部で疫学講座の主任教授を務めています。それと同時に、いくつかの疫学研究に携わっています。

　そこで扱うのは、60年前の古くさい話ではありません。60年以上続いて蓄積された最も新しい現在のビッグデータです。エビデンスの強さは、ほかに類を見ません。本書では、このCIRCSや、やはり私が携わっているいくつかの研究、あるいは国内外のいろいろな研究が示す、真に健康になる方法を説いていきます。

朝ごはん抜きは危ない

「ギリギリまで寝ていたいから朝食は食べない」という人は多いですね。でも、朝食を摂ったほうが肥満や糖尿病にはなりにくく、肝臓の機能も良くなるということがわかっています。

　私たちが食事をすると、血糖値の上昇が始まります。そのとき、インスリンというホルモンが分泌され、血糖値の上昇をほどほどに抑えてくれます。こうしたことが1日3回ほど行われることで、私たちは健康を保っています。

　一方で、朝食を抜いてしまうとお腹がすいて、昼にドカンと食べることになります。すると、インスリンの分泌が間に合わず血糖値が上がりすぎてしまい、糖尿病に近づいてしまうのです。

　糖尿病があると、ほかのさまざまな生活習慣病にも罹りやすくなることがわかっていますから、朝食抜きはNGです。

理想の朝ごはんってどんなもの？

　和食は、野菜が多く、脂質が少なめだという点では健康食です。ただし、塩分が多いのと、カルシウムが足りないという欠点があります。

　逆に言えば、塩分を控えめにしてカルシウムをプラスした和食は最強です。

　1日のスタートとなる朝食は、栄養素的にも腹持ちの面からも、炭水化物とタンパク質が必須です。そこで、まずは米飯に納豆や卵をつけましょう。魚もいいですが、アジの干物や塩鮭は塩分が多いのでやめておきましょう。

　一番おすすめなのがサバの缶詰です。かつて私は、2週間にわたって肉を避け魚を食べ続ける実験をしたことがあります。そのときにもサバ缶を活用しましたが、2週間後にはあらゆる血液の数値が良くなっていました。

　サバ缶はできれば水煮を選び、ごく薄味で食べるといいでしょう。納豆の醤油も控えめに。そして、ここにヨーグルトを足せばカルシウムも補えます。

（本記事は『10000人を60年間追跡調査してわかった健康な人の小さな習慣』に関する追加取材に基づく原稿です）