ワースト2位:ジョージア→アルメニアへの入国手続き中、◯◯にキスされて即病院へ

 往復航空券は諸税込みで、破格の5万円代。私はジョージアで3日間を過ごした後、隣国アルメニアを目指して夜行列車(2等席・4人部屋・料金7千円)に乗り込んだ。

筆者が実際に乗った夜行列車筆者が実際に乗った夜行列車(提供=筆者)
二段ベッドの上段が著者のベッドだった二段ベッドの上段が著者のベッドだった(提供=筆者)

 2時間ほど揺られた頃に、鉄道が停車した。なんでも一度列車を降りて、駅のホームにある「キヨスク」のような建物で、出国スタンプをもらう必要があるそうだ。

 外に出ると、20人くらいの乗客が先に並んでいた。列に加わった私はバッグを床に置き、パスポートを取り出そうとしたその瞬間……。

「ワン!ワン!ワン!」

 しゃがみこんだ私をめがけて、3匹の野犬が飛びかかってきた。その犬たちは私の顔を嬉しそうに舐めた。ほっこりする光景に私を含め、他の乗客や出国審査のオッちゃんたちは笑顔だ。しかし、気のせいでなければ、ワンちゃんの舌が私の唇に触れたような気がする……。

 野犬の唾液には、狂犬病ウイルスが含まれている危険がある。狂犬病は、傷口や粘膜に唾液が触れることで感染する。狂犬病の致死率は、一度発症するとほぼ100%。残念ながら命は助からない。外務省によると、ジョージアは狂犬病リスク国で、2022年と2024年に死亡者が報告されている。

 楽しい旅が一変。生命の危機を感じる絶体絶命の旅路に変った。私は人生で初めて異国の病院へ行き、狂犬病ワクチンを打った。

グルジア文字で書かれたワクチン接種予定表グルジア文字で書かれたワクチン接種予定表(提供=筆者)

 ワクチンを迅速かつ適切に接種できれば、ほぼ100%の確率で狂犬病の発症を防ぐことができる、らしい(WHOの基準によると、事後のワクチン接種は計5回必要になる)。

 帰国後、日本の検疫に報告を入れた。担当者からは「唇もそうだけど、男性は髭剃りで肌に傷があるかもだから、ワクチン打ったのは正解だった」「野犬に噛まれたらみんなヤバイと思って病院に行くけど、君みたいなケースは大丈夫だろうって自己判断して、そのまま亡くなってしまう例が世界にはあった」と教えてもらった。

 なお世界には約200国が存在するが、狂犬病の発生がない国は日本を含め、わずか10国程度しか存在しない。

オレンジで塗られた地域は狂犬病リスクのある国だ(出典:厚労省HP)オレンジで塗られた地域は狂犬病リスクのある国だ(出典:厚労省HP)