Rella:私は沓名さんより10年以上後の世代ですが、中高生の頃までは「イラストでは食べていけない」と思っていました。特に中国は大学受験に厳しいですし、建築系の両親から「アート業界は苦労するよ」と言われてきたので、絵を描いて暮らすなんて考えてもいませんでした。
沓名:その頃の将来の夢は何でしたか?
Rella:デザイナーです。デザインの領域なら色々と仕事がありそうだなという曖昧な認識で、大好きな絵は趣味として楽しんでいこうと思ってました。でもpixiv(※1)の登場で状況が変わりました。当時、pixivは中国でも日本のイラスト投稿サイトとして知られていて、人気の絵がランキングに掲載されます。ただ、イラストを描くだけではなく「pixivに投稿すると世界中の人に見てもらえて、評価される」という世界があると知ったんです。

※pixiv:2007年に開始したイラストやマンガ、小説の投稿・閲覧ができるソーシャルネットワーキングサービス(SNS)。2025年5月現在、総登録ユーザー数は1億人以上。
「イラスト」と「アート」(絵画)は
何が違うのか
──ちなみに、イラストとアート(絵画)の違いは、簡単に言うと何ですか?
Rella:今で言う“イラスト”は、キャラクターがいて、そのキャラを引き立てるための演出があって……昔とは意味合いが変化しており、とても限定されたイメージになっています。
沓名:イラストと絵画の違いは「クライアントワークがあるか」という点も考慮すべきかなと思います。絵画はあくまでもアーティストの想いでできたものだけど、イラストは誰かのオーダーがあって広告やメディアで活用されるイメージです。
私はイラストが、江戸時代における浮世絵に近い存在だと思っていて。大衆の支持によって価値が決まるし、評価も「いいね」の数やSNSでの反応に左右される。アート(絵画)は評論家などのアカデミックな人々や、歴史的な文脈に左右されることが多く、評価の基準が違いますね。