だれでも聞き上手になれる「質問の技術」
20万部のベストセラー、200冊の書籍を手がけてきた編集者・庄子錬氏。NewsPicks、noteで大バズりした「感じのいい人」の文章術を書き下ろした書籍『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか?』(ダイヤモンド社)を上梓しました。
実は、周囲から「仕事ができる」「印象がいい」「信頼できる」と思われている人の文章には、ある共通点があります。本書では、1000人の調査と著者の10年以上にわたる編集経験から、「いまの時代に求められる、どんなシーンでも感じよく伝わる書き方」をわかりやすくお伝えしています。

「口数が少ない」のになぜか好かれる人が自然と実践している「質問」のコツPhoto: Adobe Stock

聞き上手になるための3つの質問の技術

1000人の取材から学んだ「質問の技術」は以下の3つです。

質問の技術①「援護法」を使う

気になる。質問したい……。でも、以下のようなときって躊躇しませんか?

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・確信をもてないとき(相手に失礼にならないか?)
・個人的な事情について聞きたいとき
・自分の意見だと思われたくない(けれど気になる)とき
・批判的な内容に触れたいとき
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そんなときは「援護法」を使うのがおすすめ。援護法とは、外部の情報源を引用して質問することで、直接的な響きを弱める方法です。

たとえば、こんな感じです。

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・◯◯って聞いたことがあるのですが
・たしか◯◯の本で読んだ記憶があるのですが
・こないだSNSで話題になってましたが
・業界では◯◯という噂があるみたいですが
・私の勘違いかもしれないのですが、◯◯と教わったので……
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「援護法」を使うとエクスキューズ感が出せるので、直球で質問するより、相手も受け止めやすくなります。また回答が辛辣になる場合でも、あくまで「援護法で使った情報」が否定されているだけであり、質問者自身を否定するわけではない(ようなやりとりになる)ので、答える側としても率直に意見を言いやすいです。

ただし「援護法」を多用しすぎると、本音で話していない印象が強まるため、関係を深めることは難しいと思います。そこでおすすめしたいのが次の方法です。

質問の技術② ど直球をど真ん中に

シーンを選びますが、「援護法」とは対照的に、率直に直接的な質問をすることも効果的です。一例を見てみましょう。

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・今のお仕事ってなにが魅力なんですか?
・なんでこの業界に入ったんですか?
・どんな瞬間に幸せを感じますか?
・あのときの失敗はなぜ起こったのでしょうか?
・一番読者に伝えたいメッセージってなんですか?
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ど直球をど真ん中に質問するときのポイントは、「純粋さ」と「安心感」です。

「シンプルにあなたのことを知りたくて」という前向きな姿勢と、「なにを言われても、あなたを責めずに受け止めますよ」という覚悟を示すことが、回答のしやすさにつながります。

ちなみに、ぼくは20代中盤から経営者の取材をするようになったのですが、とくに最初のころは「どうしたら舐められないか?」を考えていました。

いろいろ試した結果、かなり有効だったのが、取材の最初のほうで、かなり調べていないとわからないその経営者(会社)の情報や業界の最新トレンドを話すことでした。「ちょっと伺いたいんですが……」と言いながら質問すると、「おっ、こいつ……」という感じに見る目が変わり、信頼関係をより早く築けるようになったように思います。

なお、「すごく痩せましたよね?」「年収はいくらですか?」みたいなモラルに欠ける質問は基本NGで、相手から話す機会があったら、さりげなく深掘りするくらいがいいとぼくは考えています。

質問の技術③ 深掘りする

質問上手なインタビュアーを見ていると、「広さ」と「深さ」が両立しているように感じます。多角的な視点から質問しつつ、ここだと思ったテーマは徹底的に深掘りしていく。言ってみれば、「拡散モード」から「一点突破モード」の切り替えがうまい、ということですかね。

相手の回答を受けて、さらに掘り下げて質問することで、表面的な会話から一歩踏み込んだ対話になります。たとえば、以下のイメージです。

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①具体例を挙げてもらう
例:「具体的にどのような場面でそれを経験されましたか?」

②理由を尋ねる
例:「どうしてそのように考えるようになったのですか?」

③感情を探る
例:「そのとき、どのような気持ちでしたか?」

④比較を求める
例:「以前の状況と比べて、何が変わったと感じていますか?」

⑤仮説を立てる
例:「もし◯◯だったら、どのように対応されたと思いますか?」

⑥きっかけを聞く
例:「いつから○○なのですか?」
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ただし深掘りしすぎると、相手は追い詰められたような気分になるので、反応を見ながら適度に使うようにしましょう。

いろいろ書いてきましたが、質問のときに最も大切なのは、相手のことを純粋に知りたいという気持ちと、相手を大切に思う姿勢だと思います。ぜひ日常のコミュニケーションでも意識してみてください。

庄子 錬(しょうじ・れん)
1988年東京都生まれ。編集者。経営者専門の出版プロデューサー。株式会社エニーソウル代表取締役。手がけた本は200冊以上、『バナナの魅力を100文字で伝えてください』(22万部)など10万部以上のベストセラーを多数担当。編集プロダクションでのギャル誌編集からキャリアをスタート。その後、出版社2社で書籍編集に従事したのち、PwC Japan合同会社に転じてコンテンツマーケティングを担当。2024年に独立。NewsPicksとnoteで文章術をテーマに発信し、NewsPicksでは「2024年、読者から最も支持を集めたトピックス記事」第1位、noteでは「今年、編集部で話題になった記事10選」に選ばれた。企業向けのライティング・編集研修も手がける。趣味はジャズ・ブルーズギター、海外旅行(40カ国)、バスケットボール観戦。

※この連載では、『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか?』庄子錬(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集して掲載します。