文章で「モンスター社員かどうか」を見極める3つの方法
20万部のベストセラー、200冊の書籍を手がけてきた編集者・庄子錬氏。NewsPicks、noteで大バズりした「感じのいい人」の文章術を書き下ろした書籍『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか?』(ダイヤモンド社)を上梓しました。
実は、周囲から「仕事ができる」「印象がいい」「信頼できる」と思われている人の文章には、ある共通点があります。本書では、1000人の調査と著者の10年以上にわたる編集経験から、「いまの時代に求められる、どんなシーンでも感じよく伝わる書き方」をわかりやすくお伝えしています。

優秀な人事が厄介な「モンスター社員」を採用前に見抜く、意外すぎる方法とは?Photo: Adobe Stock

こんな文章を書く人は要注意!

ぼくは文章に関わる仕事をしていることもあり、文章を読めばその人の人となりがそれなりにわかります。新たにメンバーを採用するときは、面接の前段として「文章」の審査を徹底しています。

その経験からいうと、文章による採用可否の判断はかなり有効だと考えています。面接と並行して「文章審査」をすることで、リスクの高い人材を採用してしまう確率を大きく減らせるということです。

というのも、文章は読み返して推敲できるからです。「この表現でよいのか?」と考える時間的余裕があり、一晩寝かせて読み返すこともできる。その一手間をかけられる人を採用したいのです。もちろん文章にもセンスの有無はあると思いますが、努力次第で改善できる余地が大きい。ぼくはそう考えています。

実際、ある大企業の人事責任者から聞いた話でも、次の4つに当てはまるような文章を提出してきた人の場合、採用対象から外すことも多いそうです。

●------------------------------------------
① 誤字脱字が多い
注意力や慎重さが欠如している可能性が高そうです。以下の例文では、「インターンシップ」と「貢献」の単語に誤字があります。

例:
私は大学時代に経営学を専攻し、インターシップでも貴重な経験を積みました。御社の事業拡大に貢けんできると確信しております。

② 感情的な表現が多い
感情的な表現が多い人は、感情コントロールが苦手な可能性があると考え、避けています。以下の例文では、前職への否定的な感情をあらわにし、また採用への強い要求を示すなど感情的な表現が多く含まれています。

例:
前職では、上司と考えが合わず、新しいアイデアを出しても却下されることが多かったです。御社なら私のような若手の意見もきっと尊重してくれると思います。私の能力を正当に評価してくれると信じています。ぜひ採用してください。

③ 構成が論理的ではない
思考力が欠けていることを示唆しています。たとえば以下の例文では、関連性の薄い情報が混在していて、主張と根拠の関係がわかりづらいです。

例:
大学時代はマーケティングを学び、サークル活動では後輩の指導にあたりました。アルバイトでは接客を経験し、お客様満足度向上に努めました。プログラミングにも興味があり、独学でPythonを勉強中です。これらの経験を活かし、貴社の発展に寄与したいと考えております。

④ 言葉遣いが不適切
状況把握力や社会性の欠如が表れがちな部分です。以下の例文では一見して大きな問題はないように見えますが、ビジネスシーンで求められる適切な距離感や相手の立場への配慮が欠けています。

例:貴社のサービスには以前から注目しており、ぜひ一緒に働きたいと思います。私のスキルを活かせる環境だと確信していますので、ぜひ採用を検討してください。お忙しいとは存じますが、できるだけ早めにご連絡いただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。
------------------------------------------●

もちろん、ひとつの文章だけで人を完全に判断することはできません。が、少なくとも注意が必要なサインとしてとらえることができるのではないでしょうか。

採用プロセスに「文章審査」を組み込む場合のコツ

「文章審査」を採用プロセスに組み込む場合は、次の3点を意識するのがよいと思います。

=======================================
① 業務に関連した具体的な課題について書いてもらう
応募者の「論理的な構成力」「問題分析力・問題解決力」を見極められるテーマです。単なる文章力だけでなく、専門知識や創造性も同時に評価できるため、より総合的な判断が可能になります。

例:
あなたが過去に担当した業務や製品について、その売上を伸ばすためにとった行動や、今後実施すべきだと考える戦略を500字程度で説明してください。

② 特定のトピックについて、相反する立場からの意見を書いてもらう
応募者の思考力や柔軟性、多様性に対する意識などを評価できます。

例:
「在宅勤務が増加することのメリットとデメリット」「AIの発展が雇用にもたらす良い面と悪い面」など

③ 文章評価の基準を明確にし、複数の評価者で判断する
担当者一人だと、主観的な判断になりがち。評価基準を明確にしたうえで、複数の目で判断しましょう。

例:
「誤字脱字の少なさ」「言葉遣いの適切さ」「論理性」などの項目を5段階で評価し、複数の評価者の平均点で判断する。
=======================================

文章チェックの段階で候補を絞れると、採用活動の手間も省力化しそうです。ぜひ参考にしてみてください。

庄子 錬(しょうじ・れん)
1988年東京都生まれ。編集者。経営者専門の出版プロデューサー。株式会社エニーソウル代表取締役。手がけた本は200冊以上、『バナナの魅力を100文字で伝えてください』(22万部)など10万部以上のベストセラーを多数担当。編集プロダクションでのギャル誌編集からキャリアをスタート。その後、出版社2社で書籍編集に従事したのち、PwC Japan合同会社に転じてコンテンツマーケティングを担当。2024年に独立。NewsPicksとnoteで文章術をテーマに発信し、NewsPicksでは「2024年、読者から最も支持を集めたトピックス記事」第1位、noteでは「今年、編集部で話題になった記事10選」に選ばれた。企業向けのライティング・編集研修も手がける。趣味はジャズ・ブルーズギター、海外旅行(40カ国)、バスケットボール観戦。

※この連載では、『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか?』庄子錬(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集して掲載します。