
ロシア、ウクライナ、捕虜交換では合意
トランプ氏主導の停戦和平交渉は“失速”か?
ロシアのウクライナ侵攻から3年超、「即時戦闘停止」を大統領選で掲げたトランプ大統領とプーチン大統領との直接の折衝を通じて、ウクライナ戦争の停戦に向けた機運の高まりが期待されたものの、早くも頓挫が危ぶまれる。
6月2日、トルコ・イスタンブールで行われたウクライナとロシアの第2回の直接協議では、追加の捕虜交換のほか、遺体の返還などで合意したといわれるが、停戦に向けた双方の歩み寄りはなく、不調に終わったものとみられる。
4日には、トランプ大統領とプーチン大統領の電話協議が行われたが、トランプ氏のSNSへの投稿によると、プーチン大統領は、ウクライナが直接協議の前後に行ったロシア空軍基地へのドローン攻撃やインフラ施設への爆破事件などを非難し、対抗措置などの報復を示唆したとされる。
トランプ氏はプーチン氏との協議を「会話は弾んだが、すぐに平和につながるものではなかった」とし、5日のホワイトハウスにおけるメルツ独首相との会談の際には、今後の停戦仲介の姿勢を問うた記者団に対して、ロシアのウクライナ侵攻を子ども同士のけんかに例えて「しばらく戦わせた後で引き離した方がいい」と答えたという。停戦実現に向けた積極関与の姿勢は影を潜めつつあるようにも感じられる。
一方で4日、英国とドイツが共催したベルギー・ブリュッセルでのNATOのウクライナ軍事支援会合では、米国のヘグセス国防長官が欠席した。同会合はバイデン前政権以来、前の国防長官であるオースティン氏がプレゼンスを発揮してきたことに鑑みて、トランプ政権は、米国が主導してきたウクライナ軍事支援から距離を置く姿勢を改めて示したといえよう。
トランプ氏が大統領就任とともに注力してきた停戦和平の動きが勢いを弱めるなか、プーチン大統領は、停戦交渉に応じるという米国を強く意識した姿勢を見せつつも、実際には前線で攻勢を仕掛けており、少なくとも現時点において戦争終結よりもロシアの言う「特別軍事作戦」の継続に向けたメッセージを発しているようだ。