子どもが少し大きくなっても、親の悩みや不安は尽きません。今日もイヤな叱り方をしてしまったと、落ち込むことも……。きれいごとでは進まない子育てでうまく立ち回るために、23年間の小学校教師経験を含む40年超の実績のある教育評論家・親力アドバイザーの親野智可等:著『ずるい子育て』(ダイヤモンド社)に頼ってみませんか。本連載では、多種多様な子どもたちとその保護者に向き合って生まれた「親がラク&子どもが伸びる」一石二鳥のテクニックを紹介していきます。

「科学的に正しい子育て」がうまくいかない家庭の共通点とは?Photo: Adobe Stock

「○○が脳を育てるというエビデンスがある。東大生の○%がやっていた」
「幼少期に○○をやっておくと学力が伸びるというエビデンスがある」

 最近このような話を見聞きすることが増えました。それは、子育てや教育においても、エビデンスが重視されるようになったからです。

 そして、これは基本的にはよいことですが、親御さんたちには気をつけてほしいことがあります。

 それは、こうしたエピデンスというものは統計的に処理した数値であり、「一般的・平均的にはそうだ」というだけの話だということです。ですから、それがわが子に合うか否かはまったく別問題です。

 つまり、一般的には「○○が脳を育てる」といっても、それがわが子に合わなくて、本人がやる気になれない、ということもあるのです。それでは楽しくできませんし、イヤイヤやり続けても成果は上がりません。

 すると、親が「ちゃんとやらなきゃダメでしょ。あなたのためなんだから」などと否定的な言葉で叱ることが増えます。こうなると、親子関係に悪影響が出たり、子どもの自己肯定感が下がったりします。

 週1回でもイヤなことがあると、子どもには大きな精神的ストレスになります。元気がなくなり表情も暗くなります。物に当たったり弱い子をいじめたりする可能性もあります。

 こうなると弊害のほうが、はるかに大きくなってしまいます。子どものうつ病が増えていますので、気をつけてください。

 エビデンスはもちろん参考にはなりますが、「エビデンスがあるから」ということで思考停止してそれ以上考えなくなるのは危険です。これをエビデンスの罠といいます。

 エビデンスの罠におちいることのないように、わが子の気持ちを大事にしてください。

※本稿は『ずるい子育て』(ダイヤモンド社)の著者・親野智可等が子どもに関わるすべての人に伝えたい書きおろしメッセージです。