
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第64回(2025年6月26日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)
次郎(中島歩)が日記帳に残した
のぶへのメッセージ
「自分の目で見極め 自分の足で立ち 全力で走れ 絶望に追いつかれない速さで それが僕の最後の夢や」
節子(神野三鈴)がのぶ(今田美桜)に持ってきてくれた次郎(中島歩)が使っていた速記の本。のぶはさっそく勉強をはじめ、次郎が日記帳に残したのぶへのメッセージを解読することに成功した。冒頭に記したのがそれである。
死を覚悟した間際、次郎は、このメッセージ通りに生きるのぶを夢見たのだ。世界を旅する夢を諦めて、のぶに夢を託した。悲しい。すごく好人物だったので亡くなったことが惜しまれる。
「絶望に追いつかれない速さで」。だから第64回の展開は速い。戦争の悲しみや絶望を引きずらず、一気に明るいムードに変わった。やっぱり第63回のラストがタイトルバックのラストのようだったので、ここで完全に後半戦に切り替わったのだろう。
のぶは、速記で「あんぱん」と書けるようにもなった。この時代、速記を習得したら、女性でもいい職に就けるらしい。
節子も羽多子(江口のりこ)も、のぶが元気になってホッとする。