
活気に満ちた闇市で
のぶの新しい出会い
節子は大阪の長男のところに行くことにしたと羽多子に語る。だからのぶに若松の家に縛られることはないと暗に羽多子に伝えたのだ。若松の長男は大阪にいて、節子と夫は高知で、次郎とは別居していたという家族関係がやっとわかったときにはもうお別れ。
それにしてもお父さんが存在していたとは。なんで結婚式にも来なかったんだろう。次男だからってずいぶん放任主義。
「みんなたくましいね」と節子は焼け跡で働く人たちを見つめる。確かに昔の映画を見ると、戦後の街の描写はほんとうに熱く活気に満ちている。野性味あふれている。人の数もやたらと多い。この勢いで一気に高度成長に突き進んでいったんだろうなあと思う。
のぶは速記の実践のために、闇市で人々の会話を速記しはじめる。
闇市で飲んでいて、のぶに気づいた高知新報の東海林(津田健次郎)は彼女を記者に採用すると言う。
「好奇心 探究心 しぶとさ ずうずうしさ 新聞記者に必要なものをすべて持ち合わせちゅうき」
東海林の言葉を真に受けてさっそく新聞社を訪ねるのぶ。かなり飲んでいたから忘れられていそうな心配も感じるが、のぶのモデルの暢は高知新報の記者だったので、無事就職できるだろう。高知新報編が楽しみ。
嵩(北村匠海)のもとには健太郎(高橋文哉)が訪ねて来た。福岡の家がなくなってしまったからだという。
健太郎の姿を見てメイコ(原菜乃華)は、戦死したと思っていたと大泣き。健太郎は相変わらず彼女をのらくろに似ていると言い、嵩が「犬だしオスだし」とたしなめる。やっとこの例えがふさわしくないことをツッコむ存在が現れてよかった。
メイコはふたりが帰ってきてくれて「生きてもんてきてくれてありがとうございます」と心から喜ぶ。
たとえのらくろの例えがふさわしくなかろうと、こんなふうに会話して笑えることが何よりだ。豪(細田佳央太)も千尋(中沢元紀)も次郎もいないなか、メイコには大好きな健太郎が帰ってきたのだから、心から感謝したい気持ちもわかる。
メイコのピュアな感じがとても良かった。戦争が終わった喜び、命のかけがえのなさを、まるで飢えた体がお水をやっと飲めたときの感動のようにビビッドに伝わってきた場面のように筆者は思った。原菜乃華の思い切りのいい芝居が生きた。