住宅着工戸数が落ち込み、不況にあえぐ住宅・建材業界で、大手メーカーが愛犬家市場に熱い視線を向けている。
ペットフード協会によると、飼いイヌの数は1310万匹に上り(2008年度)、15年で約1.5倍に増えた。飼育世帯は全体の18%に上る。しかも、富裕層が多いため、家族同然のイヌのためなら消費も惜しまないのだ。
そこで、ミサワホームは愛犬家1000人の意見をデータベース化したサイトをオープンし、需要を掘り起こしている。
タイルに強いINAXは、関連のリフォーム専門店で、スタッフ対応の充実を図るため、イヌの住まいづくりの専門家「愛犬家住宅コーディネーター」(民間のワンオンワン認定)の資格取得を急いでいる。東洋エクステリアもイヌを重視しており、庭と家を結ぶガーデンルームに定評がある。
なかでも積極的なのは、大建工業。昨年8月に発売したイヌ用床材「ワンラブ」シリーズが好調で、戸建て向けから今春にはマンション用を販売、来春までにホームセンターを通じ一般向けに広げていく。売り上げは年間目標の10億円に達し、今後も2倍の成長を見込む。
特徴は、傷がつきにくく、滑りにくい点にある。表面に細かな粒子で凹凸をつけ、イヌが安心して歩けるようにした。じつは、小型犬の人気で年々増加している室内飼いは、床の滑りから脱臼などの関節症を引き起こしやすい。だが治療には保険がきかず、費用が10万円単位と高くなる。そんな飼い主の悩みに応えている。
同社の竹原章宏・内装材事業部次長は「『イヌにそこまでやるのか』と言われたが、イヌ目線が飼い主に支持された」と話す。不況の最中「お犬さまさま」なのだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 小島健志)