DV被害者だけではない。障害者も、適切な生育・生活環境にない場合がある。障害児の教育支援は、現在もまったく不十分である。障害児(者)を抱えた家庭を疎外する地域コミュニティも、地方を中心に未だ多い。

「歩けず運動能力が低いので、原家族でサンドバッグにされていた。生活保護によって、原家族から離れることができ、やっと叩かれたり蹴られたりしない毎日が送れるようになった」

 といった経験は、特に女性の障害者の間では、広く見られるものである。

 今回の生活保護法改正案に含まれている「親族の扶養義務強化」は、最大限に好意的解釈をすれば、

「家族・親族による共助や絆の復活」

 と見ることもできる。しかし、困窮者の多くは、何らかの事情により、既にそのような共同体による支援の網の目からこぼれている。多くは、困窮者本人の問題ではない。困窮者本人と家族・親族の人間関係の問題でもない。

 困窮者の周囲の共同体には、その1人を支える能力や資源がない。経済力が不足しすぎているかもしれない。歴代、「愛する」という能力を育むことのできない家庭環境が連鎖してきたかもしれない。その結果として、困窮者が生み出される。共同体によって生み出された困窮者が、その同じ共同体によって救われるわけはない。

改正すると罰則が“充実”
「不正受給」問題の落とし穴

 最後に、今回の生活保護法改正案に盛りこまれている不正受給対策の強化について、いくつかの懸念を述べておきたい。一般的に「不正受給」とされているものに関する条文は、第63条・第78条・第85条・第86条である。

(費用返還義務)
第六十三条 被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。
(費用の徴収)
第七十八条 不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者があるときは、保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用の全部又は一部を、その者から徴収することができる。
(罰則)
第八十五条 不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。ただし、刑法(明治四十年法律第四十五号)に正条があるときは、刑法による。
第八十六条 第四十四条第一項、第五十四条第一項(第五十四条の二第四項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)若しくは第七十四条第二項第一号の規定による報告を怠り、若しくは虚偽の報告をし、又は第二十八条第一項(要保護者が違反した場合を除く。)、第四十四条第一項若しくは第五十四条第一項の規定による当該職員の調査若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、三十万円以下の罰金に処する。
2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても前項の刑を科する。