トランプ大統領による突然のイラン攻撃は世界にショックを与えた。中東情勢の悪化は、石油と電気自動車(EV)のビジネスにどれほど影響を与えるのか?ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン氏に緊急インタビュー。個人が投資をする際の判断材料にもなれば幸いだ。(国際ジャーナリスト 大野和基)
ホルムズ海峡封鎖に実現性はあるのか
――トランプ大統領は6月25日、「米国が来週イランと核交渉を行う」と述べました。中東情勢は予断を許さない状況で、石油市況にも大きな影響を与えそうです。今後の展開をどのように予測しますか。

最初に言ってしまえば、最悪のシナリオはこうです。イランがホルムズ海峡封鎖、タンカー攻撃、サウジアラビアやUAEの石油施設への攻撃に出ると、世界経済は壊滅的な打撃を受けるでしょう。
ただし、イランはホルムズ海峡封鎖を議会で可決しましたが、最高指導者であるハメネイ師は実行しないと思います。米国はイラク戦争以来、ペルシャ湾で最大規模の海軍と空軍を有しており、その力は非常に強い。もし、イランがホルムズ海峡を寸断すれば、甚大な報復を受けることになるでしょう。
イランが全力を尽くせば、数週間は航路を遮断できるかもしれませんが、長くは続かないでしょう。ホルムズ海峡封鎖はイラン政権にとっても“自殺行為”であり、それほどメリットがないのです。
あるいは、イランは湾岸諸国の石油インフラを攻撃することもできます。実際にトランプ第1期政権下では、ドローンを使ったかなり派手な攻撃がありました。ただし、被害はそれほど大きくなく、イランが世界にアピールするためのものでした。
イランは、イスラエルとの停戦合意が成立する直前の6月23日夜、カタールにある米軍基地にミサイル攻撃を行いました。これは、米軍によるイラン核施設攻撃への報復という位置づけであって、見せかけのもの。事前に米国側に通達していました。
次ページでは、(1)石油価格の上昇および米国の利上げはどうなるか(2)米国内の石油産業は復権するのか、について詳しく聞きます。