空港の風景 給油するサービサー写真はイメージです Photo:PIXTA

航空燃料が不足している影響で、エアラインの路線開設や増便ができない事態が問題視されている。東京や大阪にある主要空港はもちろん、インバウンドを呼び込みたい地方空港にとっても由々しき事態だ。本当の原因は何か、国内外の石油業界を知る専門家が4つの論点で問題の核心に迫る。(桃山学院大学経営学部教授 小嶌正稔)

航空燃料の不足、本当の原因は?

 航空燃料の不足が問題視されている。成田国際空港は、海外エアライン6社で1週間当たり計57便が、新規の路線開設や増便ができない状況だと明らかにした。また、便によっては日本の空港で帰路の燃料が確保できないため、その分の燃料を最初に積むことで乗客数を絞らざるを得ないタンカリング(Tankering)という非効率な事態も起きているという。

 なぜ今、こうした問題が表に出たのか? 石油業界を専門に研究してきた筆者からすると、航空燃料不足はほぼ100%、国内の問題であって、世界で不足しているなど聞いたことがない。

 最たる理由は、石油元売り会社の対応の遅れと、タイムリーに動けない殿様商売の体質に行き着く。変わらない商慣習として1年前の予測を基に物事を動かそうとするから、ジェット燃料の適格な需要が分かるわけもなく、近年はインバウンドが増えれば不足、逆にインバウンドが減れば余るという図式になってしまった。

 航空燃料の不足は、流通経路における人手不足が主な原因だ。が、その裏には石油製品流通において元売り間の競争を排除することを容認してきた資源エネルギー庁と公正取引員会の姿勢が、問題の根底にあるはずだ。しかも、首都直下や南海トラフ地震などの大規模災害が起きた際、日本経済を機能不全に陥れる深刻な問題を内包している。

 次のページでは、下記4つの論点を詳しく解説する。

1. 元売りが精製能力を削減しすぎたから?という誤解
2. 内航タンカー~空港給油作業まで人手不足が襲う
3. 運航計画と給油計画に対する意識の齟齬
4. 競争を排除した政府対応が流通を硬直化させた