いまシリコンバレーをはじめ、世界で「ストイシズム」の教えが爆発的に広がっている。日本でも、ストイックな生き方が身につく『STOIC 人生の教科書ストイシズム』(ブリタニー・ポラット著、花塚恵訳)がついに刊行。佐藤優氏が「大きな理想を獲得するには禁欲が必要だ。この逆説の神髄をつかんだ者が勝利する」と評する一冊だ。同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)

どこにも辿り着かない思考
夜寝る前に、失敗したこと、「もっとこうすればよかった」という出来事を思い出してしまい、なかなか寝つけないという人は多いのではないだろうか。
私も、早く寝たいのにグルグル思考が止まらなくなってしまうことがある。
それを避けるため、眠気MAXになるまで本を読む、スマホで動画を見る(寝る前にデジタル機器に触れるのはよくないのはわかっているが、やむを得ない)ほか、その日のよかったことを思い出して感謝する、見たい夢を想像するといったことをやってきた。
思い出して落ち込みそうなことから、気持ちをそらすのが基本だ。
これらには一定の効果がある。
とくに、よかったこと、考えると楽しくなるようなことにフォーカスできると、翌日も前向きになれそうな気がする。
これで「寝る前のグルグル思考問題」は解決したかと思っていた。
ところが、ストア哲学者のセネカはやることが違う。
失敗も含めてすべての言動を思い返すそうだ。
反省を習慣にする
何ひとつ隠さず、何ひとつ省かない。
自分の至らなさを恐れる理由などない。
「今回は許す。同じ過ちは二度と繰り返さない」
と自分で口にすることができるのだから。(セネカ『怒りについて』)
――『STOIC 人生の教科書ストイシズム』より
ストイックな人がよく使う最重要キーワードは、「反省」の2文字だ。
できるかぎり理性的であろうとすると同時に、完璧ではない自分も認める。自分の至らなさから目を背けるのではなく、すべてを冷静に振り返り、失敗は失敗でも「理想に向かって進んでいればOK」と認めるのだ。
失敗に蓋をして考えないようにし続けていては成長できない。それより、失敗も「今回はOK」と認めて、次の行動の糧にする。
「この失敗、自分的に許せる? 許せない? どうすれば許せた?」などと吟味しようとするからグルグル思考が止まらなくなる。
「今回はOK! 次は気をつける」という考え方が前提なら、失敗を思い出しても必要以上に落ち込まなくてすむ。
考えてみれば、それ以外に方法はない。過去に戻ってやり直すことはできないのだ。今後、同じようなことがあったときにどうするかを考えればいい。そのほうが自分を高めることができる。
私はこの言葉を知ってから、フラットな気持ちでその日の言動を振り返ることができるようになった。
ストイシズム的「寝る前の習慣」、試してみてはいかがだろうか。
(本原稿は、ブリタニー・ポラット著『STOIC 人生の教科書ストイシズム』〈花塚恵訳〉に関連した書き下ろし記事です)