大手メーカー5社が発表した8月のビール系飲料の課税出荷数量は4270万ケース(1ケースは大瓶20本換算)、前年同月比マイナス6%に落ち込んだ。1992年の現行統計開始以来、最悪の結果となった。7月、8月と2ヵ月連続で史上最低記録更新である。この9月も市場低迷は続いており、まさに悪夢の第3四半期(7~9月)となりそうだ。

 年末年始と並ぶビールの最需要期であるはずの夏商戦がかつてない「空振り」に終わった背景には、少子高齢化とアルコール離れという市場縮小基調に加えて、天候不順と不況による消費者の節約志向がある。

 ビール系飲料市場は96年をピークに約16%も減少しており、縮小傾向に歯止めがかかる気配はない。しかも、今年の夏商戦は台風や降雨で例年より平均気温が低く、ビール系飲料の売れ行きはさっぱりだった。

 さらに、消費者の志向がビールから割安な発泡酒、さらには新ジャンルへと流れるカテゴリーシフトが急速に進んでいる。市場の内訳を見れば、新ジャンルの売り上げは過去最高で、ビールは史上最低。しかも、新ジャンルが市場全体を底上げするまでの原動力とはなっていない。

 消費者のビール系飲料離れも加速している。ビール系飲料より安いチューハイ、女性にも人気があるハイボールなどに需要が分散しており、かつての「国民酒」のイメージは大幅に薄れてしまった。少子高齢化の影響もあって、ビール系飲料の需要が持ち直すとは、もはや考えにくい状況だ。

 メーカー別で見れば、新ジャンルで約5割のシェアを持つキリンビールが微増となった以外、すべて前年実績割れ。大手各社は市場は縮むが、自社の販売数量は伸びるという強気の経営計画を掲げており、この状況が続けば販売計画の下方修正は必至である。場合によっては決算見込みの下方修正もありうるだろう。まさに寒い夏商戦である。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 小出康成)

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