「勤務時間」終了後も働く米国人が増加Photo:Morsa Images/gettyimages

 日中の勤務時間だけでは仕事が終わらないと感じている人は、米国で増加中のグループの一員ということになる。夕方以降に「第2シフト」で働く労働者のことだ。

 新型コロナウイルス流行をきっかけに在宅勤務が広がり、労働者は時間を問わず働くことが習慣になった。完全なリモート勤務の人は現在は減っているものの、夜になっても働き続ける人は依然として多い。その大きな理由として、会議やメール対応、実務作業が膨らみ続けていることが挙げられている。

 米マイクロソフトの業務用アプリケーションを利用する数百万人の労働者の活動に関する新たなデータによると、今年2月末までの12カ月間に午後8時以降に記録された会議の数は前年比16%増加した。夕食や家事などを済ませた後、午後10時までに再びメールを確認していた労働者の割合は約3分の1を占めた。

 ソフトウエア企業でグローバル・カスタマー・サクセスチームを率いるラビ・デサイ氏は米西海岸のカリフォルニア州からリモートで働いている。日中は東海岸のチームメンバーや顧客との会議が集中する。そのため、やり残した仕事やメール対応、「スラック」上のメッセージの処理は夜に持ち越しになることが多いという。

 デサイ氏は、部下が夜もメールを送らなければならないというプレッシャーを感じないよう、一部のメールは翌朝に送信するよう設定している。ただ、同氏の業界ではそれは難しいとし、「『常時接続』が当たり前になりやすい」と話す。

 これは現代の米国の労働文化では珍しいことではないものの、負担は増していると多くの労働者は指摘する。背景には、企業が採用を抑制し、 コストを削減し 、職務に新たな業務を追加していることが挙げられる。人工知能(AI)ツールの活用は、大多数の負担を軽減するほどは進んでいない。ピュー・リサーチ・センターが今年実施した調査では、仕事でAIをほとんど、あるいはまったく使用していないと回答した米国の労働者の割合は約3分の2を占めた。