
「Grok(グロック)」は再起動が必要だ。
人工知能(AI)スタートアップ企業xAIが開発したこのAIチャットボット(自動会話プログラム)は、明らかに創業者イーロン・マスク氏の世界観とは対立する意見を多く発するようになった。
マスク氏が最近示した方針は、ジョージ・オーウェルの小説「1984年」的な修正だとの非難も一部にあるが、理解できる。巨大テック企業は目下、ユーザーがAI製品と個人的関係を築いたと思える感覚をつくり出すことで、AI製品の差別化を図っている。
やや奇妙な言い方をすれば、それは友情を築く、つまりよく似た口調や世界観を共有するということだ。
AI開発競争は、超知能(スーパーインテリジェンス)の開発競争と位置づけられている。だが近い将来、消費者向けの最善の使い道は「孤独の癒やし」になるかもしれない。
周囲と切り離された孤独感は、流行中の病気とされており、研究によると1日15本の喫煙と同程度の危険があるという。ハーバード大学が昨年行った調査では、孤独感を軽減するためには、動画配信サイト「ユーチューブ」を視聴するよりもAIコンパニオンの方が効果的で、「他人と交流するのに等しい」ことが分かった。
かつては友達が欲しくなると犬を飼ったが、今ではテック長者の勧めるペット製品が選択肢になる。
他人と(または製品と)おしゃべりすることへの欲求が、AIのデイリーアクティブユーザー(DAU)数を押し上げる。さらにその指標が多くの投資家と資金を引きつけ、AIの改良を促している。
これは孤独の涙が後押しする「フレンド・エコノミー」と呼ぶべき好循環だ。