「やることあるのに、なぜか動けない」――そんな自分を責めて、ストレスを抱えていませんか?
勉強、仕事、筋トレ…やる気はあるのに先延ばしてしまう。多くの人が抱えるこの悩みに、心理学の視点から答えるのが、新刊『すぐやる人の頭の中──心理学で先延ばしをなくす』です。
著者は、モチベーションの研究を専門とする筑波大学人間系教授・外山美樹氏。本記事では、外山氏にインタビューを実施し、「先延ばしグセを解消し、決めたことをやり切るためのコツ」を心理学の知見をベースに教えてもらいました。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

「ポジティブすぎる人」が、実はモチベーションを維持できない決定的理由Photo: Adobe Stock

長期的にモチベーションを保つ1つのコツ

――「今年こそは、英語の勉強をやろう!」と決意するのですが、いつの間にかやらなくなってしまいます。最初のうちは頑張れるんですが、なかなか続かなくて……。どうすれば長くモチベーションを保てるのでしょうか?

外山美樹(以下、外山):そう感じている方は、まずは目標の立て方を少し見直してみるのがおすすめです。

 実は、目標の持ち方次第で、行動を継続できるかどうかが大きく変わってくるのです。

 たとえば、本書で紹介している方法のひとつに、「心的対比」というアプローチがあります。

 心的対比とは、ポジティブな未来を思い描くだけで終わらせず、「そこに至るために、自分が直面するであろう困難や障害」にも目を向ける方法です。

 これにより、単なる楽観的な空想にとどまらず、現実的な行動への意欲が高まります。

「ポジティブすぎる人」が、実はモチベーションを維持できない決定的理由

――心的対比はどんな目標に対して有効なのでしょうか?

外山資格取得やダイエットのように、達成までに時間がかかり、途中で挫折しやすい長期的で困難な目標に対して、特に効果的です。

 こうした目標は、目指す理想の状態と現実とのギャップが大きいため、漠然と夢を思い描くだけではモチベーションが続きにくくなります。

 そこで、心的対比では、「理想の未来」と「現実の障害」をあえてセットで思い描くことで、目標達成に向けた現実的な覚悟や行動意欲が高まりやすくなるのです。

 そのため、長期的な努力が必要な目標にこそ、心的対比が力を発揮します。

「理想の未来」だけではモチベーションを保てない理由

――なぜ心的対比が、ただ漠然と目標をイメージすることよりも効果的なのでしょうか?

外山:ただ「うまくいった未来」だけを思い描くと、一時的な満足感は得られるものの、それだけで終わってしまい、行動には結びつかないことが多いのです。

 理想の未来を想像することは気分を良くしてくれますが、「もう目標を達成したような気分」になってしまい、逆にモチベーションが下がってしまうことさえあります。

 一方、心的対比では、理想的な未来のイメージと、それに立ちはだかる現実の障害をあえて同時に思い描きます。

 これによって、「このままでは理想に届かない」というギャップへの気づきが生まれ、「それなら行動しなければ」と自発的な動機が高まるのです。

 このときに生まれる心理的な緊張感は、行動を起こすための内的なエネルギー、つまり目標達成に向けた原動力になります。