プレゼン資料は、「読ませるもの」ではありません。“込み入った話”を言葉だけで伝えようとすると、どうしてもまどろっこしい表現になり、非常にわかりにくい説明になりがちです。そんな時に必要なのは、伝えるべき内容の「本質」を、直観的に理解できるように「図解化」する技術。プレゼン資料は「見せるもの」なのです。そこで、累計40万部を突破した『社内プレゼンの資料作成術』シリーズの著者で、ソフトバンク在籍時には孫正義社長に直接プレゼンをして「一発OK」を次々と勝ち取った実績を持つ前田鎌利さんと堀口友恵さんに、プレゼン資料を「図解化」する技術を伝授していただきます(本連載は『プレゼン資料の図解化大全』から抜粋・編集してお届けします)。

【プロの資料作成】「ピクトグラム+文字」でわかりやすい資料をつくる方法写真はイメージです Photo: Adobe Stock

ビジネス・プレゼンで「イラスト」はNG

 図解スライドに、イラスト、写真、ピクトグラムなどを掲載しているケースをしばしば目にします。

 しかし、私たちは、社内プレゼンにおいては、イラストは基本的に使わないほうがいいと考えています。

【図-1】のようにイラスト(あるいは、イラストっぽいアイコン)を使うと、どうしても幼稚でチープな印象を与えてしまうので、スライドの説得力が格段に下がってしまうからです(社外プレゼンでは、対象者によっては、イラストが効果的なこともあります)。

【プロの資料作成】「ピクトグラム+文字」でわかりやすい資料をつくる方法

 一方、写真やピクトグラムは、使うべき場所で使うと非常に効果的です。

 写真は、本書の実例スライドでも使用していますが、実際の情景・状況(またはそれに近いもの)を写真で見せることで、スライドに強力な臨場感やリアリティを与えることができます。

 また、この項目で取り上げるピクトグラムは、テキストとセットで使うことで、相手の理解を強力にサポートする効果を発揮します。

 たとえば、【図-1】のイラストっぽいアイコンを、【図-2】のようにピクトグラムに置き換えると、スッキリとわかりやすく、しかもビジネスシーンに合致した知的なスライドにすることがきます。

【プロの資料作成】「ピクトグラム+文字」でわかりやすい資料をつくる方法

「文字+ピクトグラム」でわかりやすくなる

 いくつかピクトグラムの使用例を見ていきましょう。

 まず、【図-3】の①をご覧ください。一目瞭然かと思いますが、単に「新幹線2時間」「JR琵琶湖線5分」「徒歩15分」と記すだけではなく、そこにピクトグラムを添えたほうが、明らかに図解の「意味」を理解するスピードが速いはずです。

 このように、ピクトグラムを加えることで、理解を促進することが最大のメリットだと私たちは考えています。

【プロの資料作成】「ピクトグラム+文字」でわかりやすい資料をつくる方法

【図-3】の②では、図解の中で「お金」の流れを示す場所だけに、ピクトグラムを使用しています。

 このスライドは、自社のビジネスモデルの「収益ポイント」を説明することにあるのですが、「お金」のピクトグラムを目立つように置くことで、相手の目線を「収益ポイント」に誘導しやすくなるうえに、「ここで、お金の支払いが発生するんだな」という理解もしやすくなります。

 また、【図-3】の③では、色分けしたピクトグラムを使って組織構成を表現しています。

 こうすることで、「取締役会」「指名委員」などの構成メンバーの属性を、視覚的に把握することができるようになります。

 これを、言葉だけで説明することもできますが、内容を把握するのが非常に面倒なことになるでしょう。

 このような場合には、色分けしたピクトグラムを使って表現すれば、瞬時に理解できるスライドにすることができるのです。

(本稿は、『プレゼン資料の図解化大全』より一部を抜粋・編集したものです)

前田鎌利(まえだ・かまり)
1973年生まれ。ソフトバンクモバイルなどで17年にわたり移動体通信事業に従事。ソフトバンクアカデミア第一期生に選考され、プレゼンテーションにおいて第一位を獲得する。孫正義社長に直接プレゼンして幾多の事業提案を承認されたほか、孫社長のプレゼン資料づくりも数多く担当。2013年12月にソフトバンクを退社、株式会社固を設立して、プレゼンテーションクリエイターとして独立。2000社を超える企業で、プレゼンテーション研修やコンサルティングを実施。ビジネス・プレゼンの第一人者として活躍中。著書に『【完全版】社内プレゼンの資料作成術』『プレゼン資料のデザイン図鑑』『パワーポイント最速仕事術』(すべてダイヤモンド社)など。

堀口友恵(ほりぐち・ともえ)
埼玉県秩父市生まれ。立命館大学産業社会学部卒業後、ソフトバンクへ入社。技術企画、営業推進、新規事業展開などを担当する中で、プレゼンの経験と実績を積む。2017年に株式会社固へ転職し、スライドデザイナーとしての活動を始める。企業向け研修・ワークショップの担当や大学非常勤講師のほか、大手企業などのプレゼンのスライドデザインを担当し、のべ400件以上の資料作成やブラッシュアップを手がける。前田鎌利著の『プレゼン資料のデザイン図鑑』『パワーポイント最速仕事術』のコンテンツやスライドの制作にも深く関わった。ITエンジニア本大賞2020プレゼン大会にて、ビジネス書部門大賞・審査員特別賞を受賞。小学生向けのオンライン講座「こどもプレゼン教室」を運営し、子どもたちのプレゼンスキルアップの支援も行っている。