いま、ビジネスパーソンの間で「AI」が急速に浸透している。一部ではAIと対話して仕事を進めることが、すでに当たり前になっている。しかし一方で、「AIなんて仕事の役には立たない」「使ってみたけど、期待外れだった」という声も聞こえる。
「それは使い方の問題。AIの力を引き出すには適切な“聞き方”が必要です」。そう語るのは、グーグル、マイクロソフト、NTTドコモ、富士通、KDDIなどを含む600社以上、のべ2万人以上に発想や思考の研修をしてきた石井力重氏だ。「資料やメールを作成させるだけではもったいない。AIは適切に使えば、思考や発想といった仕事の負担も減らしてくれます」と言う。そのノウハウをまとめたのが、書籍『AIを使って考えるための全技術』だ。「AI回答の質が目に見えて変わった」と、発売直後から話題に。思考・発想のベストセラー『考具』著者の加藤昌治氏も全面監修として協力した同書から、AIを使って「発想の弱点を検証する」聞き方を紹介しよう。

AIを使って自分の企画に「ダメ出し」する
AIを仕事の効率化や自動化だけに使うのは少々もったいない。賢く使うことで「思考や発想」にも十分に役立てることができます。
その方法の1つが、技法その31「ダメ出しの模擬」。
そのプロンプトはこちらです。
〈企画を記入〉
この企画に、上層部はどのように反応するか、指摘事項を教えてください。上層部が重視する評価軸は、一般的な大企業のものを援用してください。
上司や経営者に代わってAIに、企画のダメ出しをしてもらう技法です。要するに「高い壁」になってもらうわけです。プロンプトの表現はシンプルですが、「指摘事項」と記載しているのがポイント。肯定と批判、どちらも出せる余地があるように表現することで、「強い否定」へとAIの回答を誘導しないようにしています。
「ウチは中小企業だから合わないかも」と思うかもしれませんが、やってみると、これが結構的確なんです。「そうそう、まさにウチの企画会議ではこういう指摘が返ってくる。なんでわかるんだろう?」というような驚きがあります。業界や業種、規模が異なっていても、会社の経営層として踏まえておくべき視点は、ある程度共通しているということでしょう。
まだ固まっていない「ビジネスアイデア」の弱点を検証してみよう
まだそれほど詰まっていないプランであっても、ダメ出しはありがたい話。案を練っている段階でも「ダメ出しの模擬」は使えます。
〈リモートワークの進展に伴って、都内に自社が所有している単身者用社宅として使っていたマンションの部屋をインバウンド観光客へ民泊として提供する企画を考えている〉
この企画に、上層部はどのように反応するか、指摘事項を教えてください。上層部が重視する評価軸は、一般的な大企業のものを援用してください。
いわゆる立ち話的に「こんなことをちょっと考えているんですけど、どう思います?」と聞いた際のリアクションを探る感じです。