ドイツは20年ほど前、自国領に対する軍事攻撃のリスクは極めて低いと判断し、国内最後の防空壕(ごう)を使用停止にした。その判断の転換が現在、急速に進んでいる。冷戦時代のドイツには、空襲からの避難に使える施設が約2000カ所あった。そのうち現在も残っているのは580カ所のみで、収容可能人数は48万人、つまりドイツの人口の約0.5%でしかない。ただこの数字でさえ、理論上のものに過ぎない。政府の報道担当者は「民間人防護施設の保守・点検はもはや行われていない」と述べ、国内に残存するこうした防空シェルターは首都ベルリンにある4カ所を含め、「機能しておらず、運用もされていない」とした。ロシアは数年以内に西欧を攻撃できる態勢を整える可能性があると軍事専門家らは警告している。このことは、ウクライナでの戦争のような事態が起きた場合、数百万人規模の市民が無防備な状態に置かれることを意味する。ロシアは毎日のようにウクライナの都市への爆撃を行っている。