圧倒的に悩む時間が減った」「仕事のキャパが10倍になった
そんな感想が届いているのが、木下勝寿氏の著書『売上最小化、利益最大化の法則』『時間最短化、成果最大化の法則』『チームX』『「悩まない人」の考え方』シリーズ4部作。なかでも、「これは傑作。飛び抜けて面白い必読の一冊。心から「買い」!!」と絶賛されているのが、『「悩まない人」の考え方』だ。「ここ20年以上、まともに悩んだことがない」という著者が、「出来事」「仕事」「他者」に一生悩まない最強スキル30を初めて公開した本書はどんな本なのか。本書を推薦する一橋大学特任教授でベストセラー著者・書評家でもある楠木建氏が鋭く読み解く。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)

一生悩みやすい人に共通する悪魔の思い込み・ワースト1Photo: Adobe Stock

「悩みやすい人」に共通する思い込みとは?

『「悩まない人」の考え方』の中で、著者は悩みやすい人に共通する思い込みを指摘している。

 それは、自分を取り巻く環境から悩みが生まれるという考え方だ。
 自分の外部にある状況はニュートラルな出来事にすぎない。それだけでは悩みにならないはずだ。

 いったい何が悩みを生み出しているのか。
 自分自身に他ならない。

 外生的な事実を「悩むべきこと」として受け取ったときに初めて悩みが生まれる。

 これを著者は「事実の感情化」と呼んでいる。目の前の状況を悩むべきこととして解釈しなければ、そもそも悩みは生まれない。

「外部と内部」「出来事と解釈」「事実と感情」――これらの切り分けができていないとき、人は悩みに陥りやすい。

 ネガティブな出来事が起こったとき、つい外部環境に理由を求めてしまう。しかし、環境を丸ごと変えるのは不可能だ。だから延々と悩み続けてしまう。

すぐに「日本が悪い」「日本はダメだ」と言う人の考え方

 何につけても、すぐに「日本が悪い」「日本はダメだ」という超越的な理由づけをする人がいる。価値判断や評価において、対象を何重にもすり替えているとしか言いようがない。

 なぜ「日本が悪い」となるのか。
 ようするに、鬱憤晴らしだ。どうも面白くない。仕事や生活がうまくいかなくて、何らかの不満や鬱屈が溜まっている。

 ただし、絶対悲観主義の立場からすれば、世の中思い通りにいかないのが当たり前。すべてにおいてうまくいっている人など、現実には存在しない。誰もが何らかの問題を抱えている。自分で何とかするのが大人というものだ。

 ところが、それでは元も子もなくなるので直視したくない。で、責任をおっかぶせる犯人を探す。このときにいちばん都合がいいのが「日本」というマクロシステムだ。

 なぜか。生まれた国は選べないからだ。日本というマクロ条件は他責鬱憤晴らしの性能が優れている。同じ他責の犯人探しでも、「上司が悪い」「会社が悪い」といってしまえば、「じゃあ、転職しなさいよ」となり、自責に引き戻されてしまう。これが面白くない。「日本が悪い」であれば、自責に戻ってくる心配はない。気持ちよく思考停止できる。

 日本という国家システムに問題があるのは当たり前だ。悪いところは山ほどある。そもそも国家システムに「完全なもの」などあろうはずはない。

「日本が悪い」という人に聞きたい。

 じゃあ、どの国家システムなら「良い」のか。

 日本の政治には問題がある。中にはワルの政治家もいるだろう。しかし、アメリカやヨーロッパの政治制度にもとんでもない問題が多々ある。それでも、中国のような強権国家に比べれば、相当にマシな気がする。

時間軸で「環境他責」をする人の頭の中

 論理的に類似しているパターンが「時代が悪い」――時間軸での環境他責だ。
「高度成長期の元気な日本だったらよかったけれど、俺は就職氷河期世代だから……」とか、「これからの人口減少の日本には希望が持てない」(←時間と空間の合わせ技)とかブツブツ言う。

「時代が悪い」という人に聞きたい。

 じゃあ、いつの時代なら「良い」のか。高度成長期の日本は確かに元気な面もあったが、ここそこで人が怒鳴られたり殴られたりしていた。

 中学生のとき、知り合いのケーキ屋さんでもぐりのアルバイトをさせてもらったことがある。

 クリスマスケーキの繁忙期の軽作業で、ハードな肉体労働でもない。ケーキ工場というのはわりとフェミニンな職場だとすら思っていたのだが、ミスをした人を班長さんがぶん殴っていた。

 当時はそれを見ても「人を殴るなんて……」とは思わなかった。学校でも普通に先生に殴られていたからだ。「やっぱり大人の世界って、気合入ってんなー」というのが昭和の中学生の感想だった。

悪循環の起点にして基点となるもの

 暴力だけではない。昭和の当時は公害もあった。夏に近所にあった大きなプールに行くと、光化学スモッグでしばしば目がシバシバした。

 人口は増える一方で、住宅難、交通戦争、受験地獄と言われていた。それでも、そのはるか前の時代と比べれば、昭和は相当にマシだろう。「応仁の乱の頃だったら、どう? 殺されるかもよ」とか「縄文時代だったらいいの? 竪穴式住居は冬はわりと寒いらしいよ」と、いくらでも突っ込み可能だ。

 環境他責は悪循環の起点にして基点だ。
 そのときはちょっと気が晴れても、悩みはどんどん深まっていく。しょせん1回の人生、1人の自分しか生きられない。人生晴れの日ばかりではない。それでも、生活の充実は「いま・ここ」にしかない

(本稿は『「悩まない人」の考え方──1日1つインストールする一生悩まない最強スキル30』に関する特別投稿です。)