
今どき22歳の大学新卒者を雇う理由は何だろうか?
理由は「あまりない」というのが多くの企業の答えだ。新卒者がするような仕事は人工知能(AI)が代わりにこなしてしまう。
シカゴの人材紹介会社ハイヤーウェルによると、同社のクライアントであるマーケティング代理店はエントリーレベル職の人材採用がほぼ不要となった。同社幹部によると、新卒者は以前は高い需要があったものの、彼らの仕事は今ではAIが簡単にこなす。出会い系アプリを運営するグラインダーでは、経験豊富なエンジニアの雇用に力を入れる一方、コーディング作業を行うジュニアレベル職の新卒採用を一部見送っている。同社のジョージ・アリソン最高経営責任者(CEO)は、企業の間では「下級職の人材の必要性はますます低下していく」と述べた。
オハイオ州コロンバスに本社を置くコンサルティング会社フューチャーティーのビル・バルデラスCEOは、今年の夏はインターンを採用しないことに決め、その代わりにソーシャルメディア用の文面を「チャットGPT」に作成させることにしたという。
バルデラス氏は自身の子どもたちに、対人スキルが必要で簡単には自動化できない仕事を目指すよう促している。1人は警察官になる予定だ。
大学を卒業すれば良い仕事が「保証されている」という考えは、「もはや絶対的な真実ではない」と同氏は話した。
企業と新卒者の間には、昔から暗黙の了解のようなものがあった。エントリーレベル職の社員は若くて意欲的で、給与は低くても一生懸命働く。企業は見返りに、若手が労働市場で足場を築けるよう研修や経験を積む機会を提供し、将来の労働力を育成する。
そうした関係はホワイトカラー職の採用低迷と景気後退への懸念を背景に弱まってきた。今やAIがそれを完全に破壊しようとしている。