
裕福な中国人はこれまで、ステータスの象徴として欧米の高級バッグやジュエリーを追い求めてきた。しかし今では国産ブランドへと関心を向けており、カルティエやイヴ・サンローランなどの課題となっている。
欧米ではほとんど知られていない老鋪黄金(ラオプー・ゴールド)、毛戈平化粧品(マオゴーピン)、山下有松(ソングモント)などのブランドは、中国の伝統をモチーフにしたデザインと文化的誇りを組み合わせたアピールで、中国人顧客の心をつかんでいる。
北京で会計監査人として働くチョウ・リンアンファンさん(35)は、出産を控えて入院していた昨年、病室の窓から外を眺め、老鋪黄金の金のジュエリーを販売する店舗の前に長蛇の列ができているのに気付いた。ソーシャルメディアの投稿でもこのブランドへの関心が高まっていた。
同世代の多くの人と同様に、チョウさんは金のジュエリーを時代遅れと考えていたが、老舗黄金の繊細な細工が施された花のリング、ひょうたん型のペンダント、鳳凰(ほうおう)の髪飾りを見て考えを改めた。息子が生まれてまもなく、夫は北京にある老舗黄金の店舗で1時間並び、1600ドル(約23万8000円)の蝶型ペンダントを彼女のために購入した。
「とてもスタイリッシュ」とチョウさんは話す。「高級な金のジュエリーが登場した今、ファッション好きの私が手に入れないわけにはいかない」
カルティエを擁するスイスの高級時計・宝飾品流通大手フィナンシエール・リシュモンのヨハン・ルパート会長など、欧米の高級ブランドのトップもこうした状況に注目している。ルパート氏は5月、老鋪黄金が脅威かどうか質問を受けた。
ルパート氏は、老舗黄金は「ナショナリズムや愛国心と結びついており、有利な点が多い」と述べた。だが「カルティエは普遍的だ」と続けた。