「スマホを見ていたらあっという間に2時間経ってた…」「あっという間に1日が過ぎていく」。スマホやSNSが蔓延っている今、そう感じたことはありませんか?
『とっぱらう――自分の時間を取り戻す「完璧な習慣」』の発売を記念して、年間200冊を手がけることもあるほど超人気かつ超多忙なデザイナーであり、著書『時間のデザイン』も刊行された井上新八さんに、特別に話を聞いた。(構成/ダイヤモンド社・秋岡敬子)

「呆れるほど仕事ができない人」の特徴・ワースト1Photo: Adobe Stock

Q.どうしてもアイデアが思いつかないとき、行きづまってしまいます。

 アイデアや企画など、自分の頭で考えなければならないものが全く思い付かず、ただただ時間が経ってしまうことがあります。完璧なアイデアが出るまで止まってしまうんです。つい行きづまってしまったとき、どうすればその状態から脱却することができますか?

どんなに思いつかなくても行きづまらない秘訣

井上新八氏(以下、井上) ぼくは基本、本のデザインの仕事は40件前後が並行しています。

 大体、年間で180冊程度を担当することになるのかな。これは、2日に1冊分のカバーをデザインしているということになります。

 それに、依頼される書籍はジャンルもさまざまで、ビジネス書もあればレシピ本や、実用書もあったりしますね。

――膨大な数の仕事量をこなし、その速度も驚異的なのは業界内でも有名ですが、デザインをしている途中で行きづまることはないんですか? さすがに同じ人間なら、たまには思考が停止したり、手が止まったりすることはありますよね?

井上 いや、ぼくは行きづまりません。

――行きづまらない? それって、人間に可能なんですか?

井上 そんなに難しいことじゃないですよ。正確に言うと、行きづまらないようにしています

何が何でも、いったん終わらせる

井上 ぼくが行きづまらないのは、どんな時でも「いったん終わらせる」ようにしているからですね。

 例えば、編集者との打ち合わせを終えたら、必ず翌日にはカバーデザイン1案を出すようにしています。

――「行きづまってしまった」と自分に認識させないように、先手を打つんですね!

井上 そうですね。やっぱり、行きづまってしまうと、気持ち的にかなり窮屈になるんですよ。

 だから、どんなに思いつかなくて、たとえ30点の出来だったとしても、まずは一度完成させるようにしています

 ひどい出来でも、完成していると、後から見直す余裕が生まれるんです。

 一度作ってしまえば、「思いつかない」とモヤモヤしたまま過ごさなくていいですし、数日後に見てみると「なんだか、意外といけるじゃん」と思うことがあったりするんです。

――『とっぱらう』にも似たような戦術があります!  

戦術:行きづまる
 むしろ行きづまったままでいよう。あきらめない。空白の画面を見つめたり、紙に切り替えたり、歩きまわったりしてもいいが、手元のプロジェクトに集中し続ける。
 意識レベルではもどかしく感じていても、脳内の冷静な部分は処理と前進を続けている

――『とっぱらう――自分の時間を取り戻す「完璧な習慣」』より

井上 そうそう、似てるんですよね。行きづまったときは「諦めずにずっと手を動かし続ける」しかないんですよ。

 無理に完璧を目指すのではなく、まず形にすることで精神的なゆとりを生み出すんです。それが結果として「行きづまり」という状況そのものを回避することになると思います。

「呆れるほど仕事ができない人」の特徴・ワースト1井上新八(いのうえ・しんぱち)
1973年、東京生まれ。和光大学在学中に独学でブックデザイン業を始める。大学卒業後は新聞社で編集者として働き、2001年にフリーランスのブックデザイナーとして独立。年間200冊近くの本をデザインしている。担当した書籍は『覚悟の磨き方』『自分とか、ないから。』(サンクチュアリ出版)『運動脳』(サンマーク出版)など多数。著書の最新刊は『時間のデザイン』(サンクチュアリ出版)。
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