社外取の選任にAIも活用!?元カカクコム役員が設立したベンチャーが「取締役会のDX」を支援、大手中心に約100社が導入Photo:artparadigm/gettyimages

取締役会や役員会のデジタルトランスフォーメンション(DX)を支援するベンチャー、ガバナンスクラウド(東京都港区)がAI(人工知能)の活用に乗り出した。公認会計士で元カカクコム取締役の上村はじめ氏が2021年に設立した同社は、上場する金融機関や商社、不動産会社などに顧客網を広げている。AIの活用で、将来的には最適な社外取締役の選任なども目指す。企業統治改革の流れが加速する一方、社外取締役が機能不全に陥るケースなども目立つが、取締役会のDX化は社外取の機能発揮を後押しする可能性がある。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

取締役会のDXが遅れる日本企業
ベンチャーのサービスを100社が導入

 政府などの主導でコーポレートガバナンス改革が加速する中で、企業の取締役会などのデジタルトランスフォーメンション(DX)を求める機運が高まっている。独立社外取締役の増員を受け、取締役同士の密な情報共有が求められているほか、2015年に導入されたコーポレートガバナンスコード(企業統治指針)では、社外取がガバナンスを発揮するために、充実した資料を事前に共有するよう企業に要請している。

 ところが、日本では取締役会のDXは欧米に比べ遅れてきた。欧米では、「ボードポータル」と呼ばれる取締役会のDX化を後押しするサービスが浸透している。例えば、米国を本拠にするディリジェント・ボードは世界90カ国でサービスを展開し、米国のトップ1000の企業のうち半数超が利用している。

 日本では、取締役の日程調整などは電話やメールが使われ、作成された議案もワードや紙ベースの書類で共有されることが一般的だ。紙かデータだけでなく、業務も複数のツールで分散され、非効率な上に、セキュリティー面でもリスクが存在するのが実態だ。大手企業では、取締役会の運営のために複数の専用スタッフを張り付けていることも多い。

 公認会計士で元カカクコム取締役の上村はじめ氏が2021年に立ち上げたのが、日本版のボードポータルである、ガバナンスクラウド(東京都港区)だ。現在はプライム市場に上場する大手企業などを中心に、100社ほどが同社のサービスを導入している。では、ボートポータルとは一体どのようなサービスなのか。次ページでは、ボードポータルの仕組みを明らかにする。また、AIなどの活用が、社外取締役も含めた取締役会の機能発揮を加速させる理由についても解説していく。