株主総会2025#27Photo:Bloomberg/gettyimages

日本航空(JAL)から非公開化の株主提案を受けている持分法適用会社のエージーピー(AGP)のJALへの抵抗が激しくなっている。AGPは20日、豪金融サービス大手、マッコーリー・グループなどが運用するファンドからTOB(株式公開買い付け)提案を受け、取締役会で正式に協議を始めると発表した。降って湧いたTOB提案は、26日の株主総会前に、JALへの“けん制球”となったものの、実は「勇み足」も犯している。特集『株主総会2025』の本稿では、AGPの勇み足について明らかにする。(ダイヤンモンド編集部副編集長 名古屋和希)

JALとAGPの対立は激化の一途
豪ファンドのTOB提案が急浮上

 空港の電力供給などを担うエージーピー(AGP)は6月20日、豪金融サービス大手、マッコーリー・グループなどが運用するファンドからTOB(株式公開買い付け)提案を受けたと発表した。AGPはリリースの中で、マッコーリーのTOB価格は日本航空(JAL)が提案する非公開化に向けた株式買い取り価格を大幅に上回っていると強調。「提案の内容を真摯に検討のうえ、今後の対応を適切に判断する」とした。

 JALと持分法適用会社のAGPの対立が表面化したのは、4月下旬にJALが出した、AGPの非公開化を目指す株主提案が発端だ。AGPの株式はJALが3割強、全日本空輸(ANA)が2割弱、日本空港ビルデングが2割強を握る。JALは、AGPが利益相反を過度に意識するあまり、大株主とのコミュニケーション不全が生じていると指摘。株式併合によって非公開化し、協業を加速させると主張している。具体的には、JALは株式併合によって1株当たり1550円でAGPの株主から株式を買い取る。

 AGPは猛反発した。JALがTOBを実施せずに非公開化を目指していることや、少数株主の排除を強行しようとしていることなど批判し、株主提案への反対を表明した。「JALvsグループ会社」という極めて異例の構図の対立に発展したのだ。

 両社の対立が深まる中で、降って湧いたのがマッコーリーのTOB提案だった。TOB価格はJALの買い取り価格である1550円を大きく上回る2015円。JALの株主提案に反対を貫いていたAGPにとっては、「渡りに船」だったともいえるだろう。

 ところが、このTOB提案の扱いを巡り、AGPは「勇み足」を犯すことになる。その結果、AGP側が掲げる「少数株主の保護」に反するような事態も生じた。次ページで、AGPの「勇み足」に加え、JALとの暗闘の中で、AGPのやや過剰ともいえる振る舞いについても明らかにしていく。