独自の国家資本主義に進む米国Photo:Tom Williams/gettyimages

 一世代前には、中国が自由化を進めれば同国経済は米経済に似てくるという考えが一般的だった。ところが今や、米国の資本主義の方が中国に似始めている。

 最近の例としては、ドナルド・トランプ米大統領が半導体大手インテルの最高経営責任者(CEO)に辞任を要求したこと、エヌビディアとアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)が中国向けの特定の半導体製品の売上高の15%を米政府に提供するという合意、日本製鉄のUSスチール買収認可の条件となった米政府によるUSスチールの「黄金株」取得、そして貿易相手国・地域が約束した1兆5000億ドル(約220兆円)の対米投資についてトランプ大統領が直接指揮する計画などが挙げられる。

 これは国家が生産手段を所有する社会主義ではない。むしろ、社会主義と資本主義のハイブリッド型である国家資本主義に近く、この制度の下では国家が名目上の民間企業の意思決定を指導する。

 中国は自国のハイブリッド型制度を「中国の特色を持った社会主義」と呼んでいる。米国は中国ほど進んでおらず、ロシア、ブラジル、そして時にフランスを含む、より穏健な国家資本主義の実践国の域にさえ達していない。それ故、この変異形を「米国の特色を持った国家資本主義」と呼ぼうと思う。それでも、かつて米国が体現していた自由市場の精神からの大転換となる。

国家資本主義を受け入れるまでの道のり

 自由市場資本主義は機能していないという考えを国民および与野党双方が抱かなければ、米国が国家資本主義に手を出すことはなかっただろう。自由市場資本主義は、利益の最大化を追求するCEOたちに生産の海外移転を促した。その結果、製造業の雇用減、重要鉱物など不可欠な製品供給の中国依存、そしてクリーンエネルギーや半導体といった将来を担う産業に対する投資不足が生じた。

 連邦政府はしばしば企業活動に介入してきた。第2次世界大戦中に生産を指揮したほか、新型コロナウイルス流行のような緊急事態の際には国防生産法の下でそれを行った。2007年〜09年の金融危機では銀行や自動車メーカーを救済した。だが、これらは一時的な緊急措置だった。