
米国の雇用市場
やはり減速していた
8月1日公表の米雇用統計によって引き起こされたショックは、ひとまず収束しつつある。しかし、その影響は今後もいろいろなところに出てくる可能性が高い。まずは改めて雇用統計の数字を冷静に眺めてみよう。
グラフ1は、非農業部門雇用者数の前月比増加数と6か月移動平均の推移である。7月の前月比増加数は7万3千人増と予想を下回る結果となったが、それ以上に大きかったのが5~6月分の修正で計25万8千人分が下方修正されたことだ。
点線で示されている修正前の状況をみると、「米国経済は景気減速傾向にありながら、予想以上に雇用市場がしっかりしており、景気後退入りリスクは大きくない」と評価することが妥当だろう。しかし修正後では、6カ月移動平均が10万人を大きく割り込むなど雇用の鈍化傾向がくっきりと表れており、前月までとは印象が一変している。
雇用統計はもともと事後の修正が頻繁に行われる指標だが、今回の修正は単に幅が大きいだけでなく、経済状況の評価を揺るがせる内容であったことも大きなショックを引き起こす一因になったと考えられる。
もっとも、この下方修正が意図的に操作されたものだという主張には無理がある。むしろ、修正前の予想以上に底堅い数字の方こそ違和感を覚えるものだったといえる。つまり、起きているはずだった政府部門や景気敏感業種における人員削減の動きが、修正前の数字には十分に反映されておらず、今回の修正によってそれらがきちんと反映されるようになったというのが実情であろう。