
米半導体大手 インテル のリップブー・タン最高経営責任者(CEO)は、就任からわずか5カ月で早くもその座を守るための闘いを強いられている。しかし、同社が自ら進むべき道を決断するまでは、誰がCEOを務めても厳しい状況が続くだろう。
アイデンティティーの問題、すなわちインテルが半導体設計企業になるのか、製造企業になるのか、それとも設計と製造を継続するのかという問題は、タン氏の就任当初は見過ごすことができた。コスト削減と半導体開発の立て直しに注力する中で、この問題への対応を先送りできたのだ。
しかし今、米政府・議会からの圧力にさらされ、タン氏と取締役会の間で緊張が高まる中、同氏の長期戦略の欠如はもはや無視できなくなっている。
ドナルド・トランプ大統領は先週、 タン氏の辞任を公に求める という前例のない措置に出た。トム・コットン上院議員(共和、アーカンソー州)はこれに先立ち、タン氏の過去の中国でのビジネス活動に疑問を呈する、インテルの取締役会宛ての書簡を公表していた。タン氏は11日にホワイトハウスでトランプ氏と会談し、政治的な火種を消そうとしたが、結論には達していないようだった。トランプ氏は、閣僚とタン氏が「時間を共に過ごし」来週「提案」を行うと述べたが、詳細は明らかにしなかった。
タン氏は政府・議会の集中砲火を浴びながらも、最終的に生き延びるかもしれない。しかし、同氏が就任から程なくして示した優柔不断さは、インテルの問題の根深さを浮き彫りにしただけだった。同社はかつて、先端半導体の設計と製造の両面で覇者として君臨していた。だが、少なくとも3代前のCEOから始まった戦略的な失策により、製造面での優位性は半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)に奪われ、設計面での優位性は米半導体大手アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)などの競合企業に、さらには、かつての顧客であるアップルに奪われてしまった。