
かつては米民主党の岩盤支持層とされた労働組合が、トランプ大統領率いる共和党に急接近している。特集『トランプ人脈 全解剖』の#5では、USスチール問題で日本での知名度が上がった全米鉄鋼労働組合(USW)や、全米自動車労働組合(UAW)など、米国を代表する労働組合の動向からトランプ政権と米産業の今後を展望する。(共同ピーアール総合研究所主任研究員 渡辺克也)
米民主党の岩盤支持層だった
労働組合が共和党に急接近
2024年の米大統領選挙では、低所得者層が共和党支持に動いたことが、ドナルド・トランプ氏の勝利につながったとする分析が多くみられる。各種の世論調査を見るに、これは正しい。
しかし、その背後にある政治構造上の変化を見逃してしまっては、今後も「もしトラ」のような解像度の低い話に終始してしまうだけだ。世界最大の経済大国であり、日本唯一の同盟国である米国の政治分析が、「もしも」のギャンブルであっていいはずがない。
注目点の一つは、第2次トランプ政権でロリ・チャベスデレマー元下院議員が労働長官に就任した人事だ。この人事と、政権発足より続く官僚組織への攻撃、米国際開発局(USAID)や教育省の解体はひとつながりであり、背後では米政治の地殻変動が起きている。
かつては民主党の岩盤支持層といわれていた労働組合が、トランプ大統領率いる共和党に接近しているのだ。
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