ここでこの価格設定を不思議に感じるかもしれません。ハンバーガーにドリンクとポテトがついたハンバーガーセットは税込みで500円からの価格設定です。これにおもちゃとポケカがついたハンバーガーのハッピーセットが510円ですから、差し引きで考えると「おもちゃとポケモンの価格は10円!」ということになりますよね。

 これは通常の取引と考えるとおかしな話です。おもちゃとカードの製造には原価がかかりますし、ポケモンを使う以上ライセンス料も発生します。それをまとめて考えたら10円だと大赤字です。

しかしこの価格設定、マクドナルドから見ればこれでいいのです。というのもハッピーセットは通常の取引ではないのです。ビジネスとしてはおもちゃとポケカにかかるすべてのコストは日本マクドナルドにとっては広告宣伝費です。

「ポケモン」にしても「ちいかわ」にしても「マインクラフト」にしても「ディズニー」にしても、ハッピーセットの役割はその広告宣伝効果で子どもたちがマクドナルドのお店に来たがるようになることです。

 日本マクドナルドというとよくテレビで広告を見る気がしますが、実は年間の広告宣伝費は約85億円とそれほど多額ではありません。それよりもハッピーセットのように口コミで子どもたちの間で自然に広まる広告効果の方が集客には有効なのです。

視点3:「不満を持った人」と「実際の客」の不一致

 ここまでの考察を前提にしても、今回の事態はマクドナルドに一定のダメージがあったことは間違いないでしょう。ではどのようなダメージなのかを考えてみましょう。

 私が一番深刻だと感じたのは当日のクルー(従業員)たちの疲弊です。店舗を利用する人たちからのクレームや罵声を浴び、いくらバーガー類を作ってもオーダー数はこなせません。徒労のうえに顧客からの不満を受けるのではやるせないでしょう。

 先述したようにこの状況はクルーから見れば「星のカービイ」「ちいかわ」「マインクラフト」「ポケモン」と継続していますから、もう辞めたいと考えるクルーも少なからず出たはずです。ここはマクドナルドにとって明らかにデメリットが生じた部分です。

 では消費者の不満はどうでしょう?実はここは微妙なミスマッチが生じています。