お客様の「今」と「自分ごと」に響くアプローチ
ご紹介した理論以外にも、お客様の心を自然に動かし、お店との絆を深めてもらうヒントはまだまだあります。
お客様の「今この瞬間の感情」と「自分にだけ向けられた特別な関心」に注目することで、お店はもっと特別な場所になれるはずです。
現在志向バイアス
「今すぐ」の喜びが、決断を後押しする
人は「遠い未来に得られる大きな利益」よりも、「今すぐ手に入る小さな利益」を優先してしまう傾向があります。これを「現在志向バイアス」といいます。
お客様の「また今度でいいか」という気持ちを「今、買おう」に変えるには、この心理を理解することが効果的です。
1か月後の500円より今日の100円
例えば、「1か月後に使える500円割引券」を渡すよりも、「本日のお会計からすぐに使える100円割引」のほうが、お客様の心を動かす力は強いかもしれません。
購入を迷われているお客様に「本日限定でポイントが2倍になります」とお伝えしたり、「今ご購入いただくと、こちらのミニグラスをプレゼントします」と、その場で得られるメリットを提示したりするのです。
この「今すぐ」という特別感が、お客様の背中をそっと押し、先延ばしにされがちな購買の決断を力強くサポートします。
カクテルパーティー効果
「あなただけ」への語りかけが、心を掴む
騒がしいパーティー会場の中でも、自分の名前や興味のある会話は不思議と耳に飛び込んできます。人は無意識のうちに、自分と関連の深い情報を選び取っているのです。
これを「カクテルパーティー効果」と呼びます。この心理は、お客様との関係構築において非常に重要です。
すべてのお客様に同じ説明をするのではなく、一人ひとりに合わせた言葉で語りかけることを意識します。
あなただからこそお勧めしたい!
例えば、お客様のお名前を覚えて「◯◯様、こんにちは」と自然にお呼びする。そして、「以前、お祝い用の華やかなワインをお探しでしたが、今回入荷したこのスパークリングはまさに◯◯様好みだと思います」といったように、過去の会話や購買履歴に基づいた提案をするのです。
こうした「あなただからこそお勧めしたい」という姿勢は、お客様に「大勢の中の一人」ではなく「特別な顧客として大切にされている」という実感を与えます。
その感動が、お店への強い信頼と愛着を育むのです。
お客様の心に寄り添うことがファンづくりの第一歩
行動経済学は、単なる販売テクニックではありません。お客様の心理を深く理解し、より良い購買体験を提供するためのコミュニケーションのヒントです。
お客様一人ひとりの心に寄り添うことが、結果としてお店への信頼と愛着を育み、継続的な来店へとつながっていくのです。
※本稿は、『「おウチ起業」で4畳半から7億円 ネットショップで「好き」を売ってお金を稼ぐ!』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。









