「勝てるリーダー」は歴史に学ぶ…チャーチルに学ぶ、変化の時代を勝ち抜く「徹底抗戦」の流儀
悩んだら歴史に相談せよ!】好評を博した『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)の著者で、歴史に精通した経営コンサルタントが、今度は舞台を世界へと広げた。新刊リーダーは世界史に学べ(ダイヤモンド社)では、チャーチル、ナポレオン、ガンディー、孔明、ダ・ヴィンチなど、世界史に名を刻む35人の言葉を手がかりに、現代のビジネスリーダーが身につけるべき「決断力」「洞察力」「育成力」「人間力」「健康力」と5つの力を磨く方法を解説。監修は、世界史研究の第一人者である東京大学・羽田 正名誉教授。最新の「グローバル・ヒストリー」の視点を踏まえ、従来の枠にとらわれないリーダー像を提示する。どのエピソードも数分で読める構成ながら、「正論が通じない相手への対応法」「部下の才能を見抜き、育てる術」「孤立したときに持つべき覚悟」など、現場で直面する課題に直結する解決策が満載。まるで歴史上の偉人たちが直接語りかけてくるかのような実用性と説得力にあふれた“リーダーのための知恵の宝庫だ。

【永久保存版】「この人についていきたい!」と言われる、チャーチルが体現した3つのシンプルな条件Photo: Adobe Stock

なぜ彼は「徹底抗戦」を選び抜いたのか

第二次世界大戦という未曽有の危機において、ウィンストン・チャーチルは何を根拠に「徹底抗戦」を選び、そしてそれを貫くことができたのか。そのリーダーシップの源泉を探ると、次の3つの柱にたどり着きます。

未来を映す「歴史」という名の羅針盤

① 長期的視野から未来を予見していた

チャーチルが他の政治家と違っていたのは、「歴史」を単なる過去としてではなく、未来を予測するための羅針盤として活用していた点です。

彼は、第一次世界大戦後のドイツに課された過酷な賠償が、やがて強烈なナショナリズムと復讐心を生むことを早くから予見していました。そして、ヒトラーがナチ党を率いて台頭したとき、彼は直感ではなく歴史の帰結として、その危険性に警鐘を鳴らしたのです。

チャーチルの先見性は、過去の文脈と未来の脅威を結びつける「歴史的思考力」に支えられていたのです。

「妥協」の時代に響いた、孤高の「否」

② 言葉と行動に一貫性があった

1930年代後半、多くの政治家がヒトラーとの「妥協」によって戦争を回避しようと模索していたなかで、チャーチルだけは最初から最後まで、譲歩を拒み続けました。彼は「ヒトラーとは和平など成立しない」と確信し、その信念を言葉と行動で一貫して示しました。その一貫性が、やがて国民と議会の信頼を勝ちとり、彼を首相の座へと押し上げていくのです。

信念を貫くリーダーの姿勢は、周囲に安心感と明確な方向性を与えます。どれほど厳しい状況でも、チャーチルが一貫して「戦うべきだ」と語り続けたからこそ、国民は「この人について行こう」と思えたのです。

魂を揺ぶる言葉の力

③ 決断を「熱意」をもって語り、伝えきった

チャーチルの演説は、単なる政治的メッセージではありませんでした。それは自らの覚悟を、国民と世界に共有する行為でした。

「最後まで戦い続ける」「屈しない」

その力強い言葉には、深い信念と揺るぎない意思が込められており、聴く者の胸を打ちました。彼のスピーチは今なお語り継がれていますが、それは修辞の巧みさよりも、言葉に「真実」が宿っていたからに他なりません。チャーチルの熱意ある訴えがあったからこそ、国民は恐怖に屈することなく、困難な戦いに耐え抜いたのです。

時代を変えるリーダーシップの三要素

チャーチルの偉大な決断は、知識・信念・情熱という3つの要素に支えられていました。

・知識(Knowledge)――歴史を深く学び、未来を見通す力

・信念(Consistency)――考えと行動に一貫性を持ち、信頼を得る力

・情熱(Passion)――自らの意思を力強く語り、人々の心を動かす力

この3つを備えたとき、リーダーの決断は時代を変える力を持ちます。チャーチルはそれを体現した、20世紀最高のリーダーの一人だったといえるでしょう。

※本稿は『リーダーは世界史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。