船井電機やミュゼを次々買収した末に…老舗出版社「秀和システム」破綻の舞台裏【専門家が解説】秀和システムが入居していた建物(TSR撮影)

実用書や資格・ビジネス関連の書籍で知られた出版社の(株)秀和システム(東京都、以下秀和)が7月4日、東京地裁から破産開始決定を受けた。負債総額は50億788万円。そのうち、グループ会社向け連帯保証債務が40億3795万円にのぼる。秀和は代表者の交替を機に、M&A戦略に大きく舵を切った。2021年5月にグループ会社を通じて船井電機(株)(大東市、現:FUNAI GROUP、以下船井)を傘下に収め、さらに脱毛サロン大手の「ミュゼプラチナム」も手中にした。ところが、船井は2025年1月に破産開始決定を受け、ミュゼプラチナム(現:MPH(株)、以下ミュゼ)も5月に債権者から破産を申し立てられた。秀和はその後も事業を続けていたが、2025年7月に東京地裁から破産開始決定を受けた。老舗出版社の秀和がM&Aで急成長をたどり、そして一気に破産開始決定を受けるまでの顛末(てんまつ)を東京商工リサーチ(TSR)が取材した。(東京商工リサーチ情報部 本間浩介)

パソコンメーカーのMCJが子会社化
その後、投資業のウエノグループに事業譲渡

 秀和は1974年12月、秀和システムトレーディング(株)の社名で設立された。当初は競合が少なかったIT関連など実用書を手掛け、パソコン解析書「解析マニュアル」シリーズやコンピューター入門書「はじめての」シリーズなど、相次いでヒット作を生んだ。

船井電機やミュゼを次々買収した末に…老舗出版社「秀和システム」破綻の舞台裏【専門家が解説】秀和システムの本社受付(TSR撮影)

 1995年に社名を(株)秀和システムに変更すると、資格やビジネス関連の分野にも広げ、2002年7月期の売上高は27億2134万円をあげる堅実な出版社だった。

 ところが、その後の出版不況で業績が伸び悩み、2006年1月、パソコンメーカーの(株)MCJ(東京都、東証スタンダード)が秀和の株式を100%取得し、子会社となった。

 MCJは、秀和をグループのメディア戦略の中核と位置付け、約10年間にわたりMCJグループの一員として事業を展開した。だが、出版市場の縮小が続き、2015年12月にMCJは投資業の(株)ウエノグループ(東京都、上田智一社長)に秀和の全株式を譲渡し、上田智一氏が秀和の代表に就任した。そして2016年2月、ウエノグループを逆さ合併方式で秀和が吸収合併した。