『週刊ダイヤモンド』12月7日号の第1特集は「倒産危険度ランキング」。船井電機は経営破綻し、日産自動車も窮地に立たされています。大手や名門企業すら「倒産ドミノ」の脅威が迫っています。そこで今回、倒産危険度を総点検したところ、434社が倒産“危険水域”と判定されました。今こそ倒産の最新事情に迫っていきましょう。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)
高い知名度の名門企業・船井電機
300億円もの資金流出で突然破産
低価格帯のテレビに強く、海外でも高い知名度を誇った老舗電機メーカー、船井電機が10月24日、突然倒産した。取締役の一人が取締役会の決議を経なくても出せる準自己破産を申請し、東京地方裁判所が即日で破産決定したのである。
翌25日の給料日前に、約500人の従業員全員が一斉解雇の憂き目を見た。従業員への給与計1.8億円を支払うと、運転資金が1000万円を下回る窮状に船井電機は陥っていた。
破産手続開始申立書によると、9月末時点で債務超過額は117億円。資産のうち、持ち株会社の船井電機・ホールディングスへの貸付金253億円は、回収の見込みが立たず無価値。その上、33億円の簿外債務も隠されていた。
名門電機倒産の陰に、2021年5月に同社を買収した出版社、秀和システムがあった。そのトップである上田智一氏は、破産する目前の9月27日に船井電機の社長を辞めた人物。買収後わずか3年半で同社は破綻してしまった。
買収される前には347億円もあった船井電機の現預金は、あっという間に枯渇した。申立書は秀和による買収後、関連会社への貸付金や、23年4月に買収した脱毛サロン「ミュゼプラチナム」への資金支援(ミュゼはその後1年足らずで他社に売却)などで約300億円もの資金流出があったとしている。銀行関係者は「秀和が入らなければ船井電機はつぶれていなかった。もっと時間的・資金的余裕があったはずだ」と指摘する。
気になるのはこの倒産劇がもたらす今後への影響だ。次ページで確認しよう。