「投資なんてギャンブルだ」そう信じていた、お小遣い月1万5000円の40歳営業マン
投資歴70年 資産24億円――【プロの儲かる知識を簡単インストール】人生、もう詰んだ……40歳、しがないサラリーマン。月1万5000円の小遣いを握りしめ、毎日通勤する日々だ。増えない給料、重くのしかかる住宅ローンと教育費。冷え切った家庭に、もはや自分の居場所はない。そんな人生のどん底の状況で拾った、1冊の古びた手帳。それが投資歴70年、資産24億円を築いた89歳現役トレーダー・シゲルさんとの奇跡的な出会いだった。お金、仕事、家庭……すべてに絶望した崖っぷちの男が“投資の神様”から授かった「世界一のお金と人生の授業」とは?“小説形式”だからスラスラ読めてドンドンわかる話題の書『89歳、現役トレーダー 大富豪シゲルさんの教え』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものをお送りする。答えはすべて、この物語にある。
写真:川瀬典子
焦燥の背中
「はぁ……今日もダメだったか」
小さくため息をつきながら、伊藤慎平はゆっくりと歩き出した。
神戸の私立大学を卒業後、大手中古自動車販売会社に入社してから18年。かつては大阪の店舗にいたが、いまは地元・神戸の支店で営業を続けている。
同期のなかには、20代で店長になり、いまではブロック長として地域を統括する立場にいる者もいる。その一方で、自分の成績はいつも後ろから数えたほうが早く、気がつけば、後輩たちに次々と追い抜かれていた。
僕は、いったい何をしているんだろう……。
空回る情熱
自動車への情熱は、いまだ衰えていない。知識だって誰にも引けをとらないつもりだ。
けれど、売れない。成果が出ない。時間だけがむなしく積み重なり、店長への夢どころか、営業としての自信すら失いかけていた。
今日もまた、「これは成約できる!」と信じていた見込み客にそっぽを向かれた。相手の表情が曇くもった瞬間を、いまもはっきり覚えている。
悔しさよりも、情けなさのほうが勝っていた。
優しさという名の無関心
30歳を過ぎた頃からか、上司に叱られることがほとんどなくなった。そのことが逆に、じわじわと心を蝕むしばんでいた。
叱ってくれる人がいるうちが花――この言葉の意味を、痛感するようになったのは、いつのころからだったろうか。
缶ビール1本の聖域
「今日は、このまま帰りたくないな……」
そんな気分の日は、決まって少し遠回りをした。通勤で使っている車を月極駐車場に置いてから、近くのコンビニで缶ビールを買い、坂を登った先にある公園のベンチに座って缶を開ける。
小1時間ほどの“寄り道”だが、これが唯一、誰にも邪魔されずに自分と向き合える大切な時間だった。
父親のサイフとため息
5年前に購入した一軒家は旗竿地にあって、自宅には車が置けない。その不便さが、こんなときだけは逆にありがたく思える。
もし、自宅に駐車スペースがあれば、缶ビールを買って公園でひと息つく、なんてことはしなかっただろう。
車を置いてから一人で居酒屋に行こうとも思わないし、そもそも財布の中身にそんな余裕はない。月に使える小遣いは1万5000円。中学2年の娘と中学1年の息子の塾代で、家計はギリギリだ。
パートで月8万円ほど稼ぐ妻に、「たまには飲みに行きたいから、小遣いを増やして欲しい」なんてことは、とても言えない。
娘は私立高校を目指しているらしいが、公立より学費が高いからといって、わが子の夢に水を差すようなことは言いたくない。だから今日も、缶ビール片手にベンチでため息をつく。
これが精いっぱいの息抜きなのだ。



